24話 ページ24
すっかり空は暗闇に覆われているが、街はネオンが輝き明るさを取り戻す。
その中に一際目立ったキャバクラ。梵天の経営下にある店へ足を踏み入れる。顔を見るなり途端に頭を下げる従業員を横目に奥の部屋に向かえば一人の男が立っていた。
「九井様、全ての荷物をお預かりします」
三途の部下か。相変わらず部下も人相が悪い。言われた通りに荷物を全て預けて個室へと入った。
薄暗い照明に広々とした空間。そこに置かれた大きなソファにドカリとくつろぐ三途の姿があった。
「よく来たなぁ。九井ぃー。待ってたぜ」
Aの前では比べ物のにならない乱雑な態度。普段はこういう奴だ。ソファに座ることなく立ったまま目の前のソイツを睨みつける。
「個室に呼び出すくらいには大事な話なんだろうな」
「ったりめぇだろうが。じゃねぇーとテメェと好き好んで二人きりにならねぇーわ」
吐き捨てるようにいうが生憎、俺だって一緒だ。だが、苛ついた表情から途端にヘラリと笑っては
「A」
「!」
「いい名前だよなぁ。何度も呼びたくなる。その名前を聞くたびに反応しちまうよなァ?」
「…何がいいてぇーんだよ」
「そう怒んなよ。どうせ気になって仕方がねぇーくせに。なんでオレがAにやたらと構うのか」
図星をつかれあからさまに反応すると三途はご機嫌よく笑い出す。
「ハハッ!だよなァ!?特別テメェには教えてやるよ。互いにAことだぁーい好きなよしみだもんなぁ。ほら、突っ立ってねぇーで座れよ」
「…」
偉そうな態度にムカついて仕方がないが黙って大人しく席に座る。今はコイツから話を聞きたい。いや、聞かなければならない気がするんだ。
三途にとってAは何なのかを。
人に遠慮もしない。取り繕うことも嫌う。本気で心を許した相手にしか忠誠を誓わないコイツがたった一人の少女、Aに笑顔を向けるその理由を。
フーッと息を吐いて三途は記憶を思い返すよう何処か遠くを見つめて口を開いた。
「梵天が結成して間もない頃だ。初めて組織内でトラブルが起きた。働いていた下っ端の男女が梵天の金に手を出した事件。覚えてるか?」
「あぁ、覚えてる」
「すぐにマイキーに呼び出されてな。そこでオレにある初仕事が与えられた。何だと思う?」
容易く想像はつく。だが普通の神経をしてる奴なら口にするのを躊躇するだろう。しかし、目の前のコイツはニィと笑みを浮かべて平然と口にするのだ。
「そうだ。人殺しのお仕事だ」
25話・殺り損ねた『テメェ』にリベンジを→←23話・守るために自由を奪った
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Omiso(プロフ) - 十六夜夏希さん» コメントありがとうございます!好きだと言っていただけてとても嬉しく思います!また、書き終わってしばらく経った今でもこうしてコメントを頂けること幸せです!本当に最後まで読んで頂きありがとうございました! (2022年4月30日 14時) (レス) @page38 id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜夏希(プロフ) - マイキーが春千夜を見放す(?)のって珍しいですね!言葉では表せないくらい好きです。お疲れ様でした!! (2022年4月30日 13時) (レス) @page39 id: cc6ab814ba (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - ゆゑるさん» コメントありがとうございます!わわっ!たくさん褒めていただいてとても嬉しいです😊何より貴方様を楽しませられたことが作者にとって一番の幸せです😭本当に最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年4月12日 8時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゑる(プロフ) - うわぁぁぁ!!今読み終わったんですけど、最高ですっ...!作者様の表現の仕方からもう素敵でした😭めちゃくちゃ面白かったです!!!!! (2022年4月12日 1時) (レス) @page39 id: 1d05848943 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - yumuiさん» コメントありがとうございます!隠れ主人公!確かにそういった捉え方もありますね…貴方様の発想に驚かされました。作り手としてしっくりときたお言葉をいただいて嬉しく思います。最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年3月7日 16時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Omiso | 作成日時:2021年10月16日 17時