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39話 ページ40

頬を撫でる風が気持ちよく、空は夜と朝の狭間で澄み渡っている。後ろに跨るキバナさんは目を輝かせてうっすらと見える月を眺めていた。


「月が綺麗ですね」


そんなことを言ってみればキバナさんは一瞬目を見開いた後ニヤリと笑って


「なんだ、口説いてんのか?」


それに対して「どうですかね」なんて返せばハァ!?と大袈裟な反応に笑う。

最初は「何笑ってんだよ!」と不機嫌そうだったがすぐに彼も同じように笑っていた。

互いに笑い終えればしばらく沈黙が続く。それを破ったのはキバナさんだった。


「…お前は自由を選択をして後悔はないんだな」

「はい。その選択をして得られるものも失うものも分かった気がします」


そう返せばキバナさんの表情は何故か寂しげだった。


「そうだな。ダンデがあんな取り乱すのは初めて見たぜ。俺様がライバルとして励ましてやらねぇーとな」


なんていうが声は暗い。そして、フッと息を吐いては


「俺はお前が自由になることを応援していた。勿論その為になんだってしてやれた。ただ…お前のその自由な旅に俺様がついていけないのが残念だ」

「!そうですね。キバナさんは…」

「あぁ。ガラルのジムリーダーとして責任を全うする。それが俺の生き様だからな」


分かっていた。それにこの旅は一人で行くつもりだったからいいんだ。だけど______


「お前の夢の先で隣にいるのも悪くないだろうな…って思っちまうよ」


寂しげに笑う彼に何も言えなくなって胸が苦しかった。そんな私を見て少し顔を綻ばせて


「俺もダンデもお前に置いていかれるのが怖かったんだ。心の何処かで望んでいなかった。今でもそうだ」


こちらを見つめるキバナさんは意地悪そうに口角を上げて


「だから悪いな。俺はずるい奴だからお前を素直に行かせる代わりに我儘言わせてくれ」


長い腕がお腹周りに回って強く抱き締められた。

そして、こちらを覗き込む顔はくしゃりとした笑顔と共に頬は赤く染まっていた。


「好きだ、A。離れたってずっと俺のことを覚えていてほしい。この告白もこの日の景色もこの二人の時間も全部。Aの心の片隅に置かせてくれ」


その言葉を最後に私たちの会話は途切れた。

静かに流れる景色を見て風に当たりながら時間だけが過ぎていった。


ただ、繋がれた手を互いに握り締めて離さなかった。


私は今この瞬間、一秒一秒を鮮明に脳裏に焼き付かせて忘れないだろう。

ずっと心の片隅に大事にしまって。

40話「醜い感情はひた隠す」→←38話



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Omiso(プロフ) - 天音さん» コメントありがとうございます!キバナさんだけでなく、夢主まで褒めていただいてすっごく嬉しいです!それに神作だなんて…本当に勿体無いほどの素敵な褒め言葉に感激です!本当に最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年5月7日 8時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
天音 - 最高でした…!!✨とても感動しました!キバナさん カッコいい…。夢主も カッコ可愛いい…!!!神作品!! (2022年5月7日 0時) (レス) @page44 id: c80b266ed1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 葵さん» コメントありがとうございます!キバナのかっこよさにとても力を入れたのでそう言っていただけて嬉しいです!神作品だなんてそんな!私には勿体ないお言葉…感謝の気持ちで胸がいっぱいです!本当に最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年2月5日 0時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
- 自分ダンデさん推しだったけどこの作品を見てキバナさんもメッチャ好きになりました!!!これはもう神作品としか、言いようがありません!! (2022年2月4日 23時) (レス) id: 6b19049b00 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - きいさん» コメントありがとうございます!貴方様のお言葉にホッとしました。この作品を書いてよかったです!最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年1月3日 0時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Omiso | 作成日時:2021年8月10日 1時

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