捉えた瞳の向こうには【ポケモン剣盾】

40話「醜い感情はひた隠す」 ページ41

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ずるい大人だった。俺もダンデも。


夢に向かって真っ直ぐに自由を追い求めるお前は俺のことなんてすぐに忘れちまう。

だから「好き」だと告げ「覚えていてくれ」と約束で縛り付けた。お前の心にずっと居座りたかったんだ。

こんなことダンデが恩を押し付けた行為と一緒だ。

二人揃って何やってんだろうな。自分の気持ちを押し付けてAの負担を考えていなかった。


「…もうあんなところまで。はぇーな」


ムゲンダイナに跨り空を飛ぶ彼女を見上げる。わざわざナックルシティに送り届けてくれた彼女は優しい。


「あ…返事聞いてなかった」


我ながら恥ずかしい告白をしたもんだ。その返事は…いや、聞かなくたって分かりきったことだ。


夢を追いかけると決めた彼女の今に俺は入り込めない


同じように「好き」だと返してくれなかった。それが事実。だが、あの時に手を握り返してくれたこと。


俺は期待してしまうよ。


夢を追いかける彼女と取り残される自分。

その事実がこれほど辛いなんて思いもしなかった。期待を胸にしたままなら尚更。

いっそ、彼女をダンデから助け出さなければ、夢への手助けをしなければ…

それが、ガラル地方に縛り付ける唯一の方法だったとしたら惜しいことをしてしまった＿＿＿＿＿＿

なんて何考えてんだ。俺は。今更になって「心の醜さ」が浮き彫りになってどうする。


「フハッ…あーあ。だっせぇな」


どちらにしろ彼女が居るべき場所を一つに絞るなんてことは不可能だろう。

ただ、お前にここまで惚れるなんて予想外だった。こんな柄じゃねぇーのに。


あ゛ー、いっそ兄貴面なんかやめて本能のままお前を食っちまえばよかったか？


「…なーんてな。さてと！これからチャンピオン引退の手伝いでもしてやるか！」


ここからちゃんと"親しい相手"として義理を通そう。

「醜い感情」をお前に持ってしまったせめてもの罪滅ぼしに。この感情を制御してひた隠すためにも。

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