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36話 ページ37

的確な指示なはずだった。上回れない。

自信はあった。自信だけでは勝てない圧倒的強さ。

勝たなければならなかった。勝てなかった。


グォォォォという地響きのような声と共にダイマックスしたリザードンが倒れていく。

手元のモンスターボールに戻ってその場のバトルは終わりを告げた。

ガクリと膝から崩れ落ちた最後、見上げればあの日と同じ。チャンピオンとして敗北した時に見た光景が広がっていた。

美しく恐ろしく憎たらしく魅力的な彼女の瞳がそこにある。


「…ダンデさん、私の勝利です」


心の何処かで期待していた。

望めば勝利は掴めるのだと。自分がこの物語の主人公だと錯覚していたのだ。だが、現実は違った。いつもオレを上回る彼女こそが何もかも手にする。

なら、そんな君の側にいるだけでもよかった。まだ報われた。それなのに…君はオレを置いて離れていくと残酷に判断し、突き放す。なんの戸惑いもなく。


彼女の瞳にはいつまでたってもオレが映らないんだ。


そんなこと…ッ…


「〜ッ…めない」

「…!」

「ッ認めない!!!オレをチャンピオンの座から引き摺り下ろして全てを手にして尚オレの気持ちすら置いてきぼりにするというのか!?君を追い続けてきた!君に希望を抱いていた!それと同時に底知れないほど君への劣等感にずっとずっと苦しかったんだ…ッ…!ぜんぶ、知らないだろ!?知らないからそうやって簡単に夢を追うんだ。チャンピオンをやめてこの地を旅立つ?ハハッ!全く置いていかれる側の配慮なんてないんだな!!キミは酷い奴だ…ッ…本当に…!!!」


ぶつけるように吐き出せば困惑する彼女。それを見ては自嘲の笑みが溢れて止まらない。

いじらしくてみっともないのだろう。でも、こうして喚いて縋ってでも彼女を何処にも行かせたくない。

後戻りできないぐらいに彼女への気持ちは抑えられないんだ。これは恋愛感情なんて可愛いもんじゃない。

憎しみに近く尊く醜く汚く、執着心、依存心、憎悪、愛情の全てが入り混じった何か。この感情に名前なんてつけられやしない。

ただこの「苦しみ」を君にも味わらせてやりたかった

だから、君の世話係も全部受け入れた。君はオレがいないと生きていけないようにしたかったんだ。


「少しでも哀れに思うなら頼む。Aくん。行かないでくれ。こんなオレを棄てないでくれ…ッ…」


あぁ、所詮。そうさ。

オレは君の神の如く強さに当てられて憧れを抱いては嫉妬する醜い人間だ。

37話→←35話「縋って離したくなかった」



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Omiso(プロフ) - 天音さん» コメントありがとうございます!キバナさんだけでなく、夢主まで褒めていただいてすっごく嬉しいです!それに神作だなんて…本当に勿体無いほどの素敵な褒め言葉に感激です!本当に最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年5月7日 8時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
天音 - 最高でした…!!✨とても感動しました!キバナさん カッコいい…。夢主も カッコ可愛いい…!!!神作品!! (2022年5月7日 0時) (レス) @page44 id: c80b266ed1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 葵さん» コメントありがとうございます!キバナのかっこよさにとても力を入れたのでそう言っていただけて嬉しいです!神作品だなんてそんな!私には勿体ないお言葉…感謝の気持ちで胸がいっぱいです!本当に最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年2月5日 0時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
- 自分ダンデさん推しだったけどこの作品を見てキバナさんもメッチャ好きになりました!!!これはもう神作品としか、言いようがありません!! (2022年2月4日 23時) (レス) id: 6b19049b00 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - きいさん» コメントありがとうございます!貴方様のお言葉にホッとしました。この作品を書いてよかったです!最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年1月3日 0時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Omiso | 作成日時:2021年8月10日 1時

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