17話 ページ18
「こうやって直接会うのは随分と久しぶりだな」
「キバナさん…なんでここに…ッ…」
「なんでってなぁー。お前あんな目立って飛んでたら目につくぜ。それに…泣きそうな顔してるやつほっとけねぇーだろ」
伸ばされた手は、そっと目尻に触れて涙を拭かれた。そのまま長い足を折り、私と目線を合わせる。
「本当に…久しぶりだな。ここ数年、俺は遠目からお前を見るしかなかった。チャンピオンとしてのお前を。けど今はお前自身…Aがここにいる。実は泣き虫で頼ることが下手くそなお前が。やっと会えた」
覗き込むように顔を近づけて「綺麗になったな」と呟く彼はヘラリと笑った。
そんな彼にブワリと気持ちがこみ上げて思わず抱きついた。「おっと」という声を出しながらもしっかり受け止めてくれる。
そんな彼の胸を借りて今まで溜まっていたものを吐き出すようにわんわん泣いた。
________
「見た目は変わっても中身はなんも変わってねぇーんだな。ガキンチョ」
なんて言いながらも背中をさすってくれる優しさに胸がじんわりとする。ガキンチョは余計だけど…
「キバナさんには見苦しいところを見られてばかりですね」
「泣くことに見苦しいも何もあるか。それに弱さを俺に見られるなんて今更だろ?それよりぃ〜」
人差し指が額にぐりぐりを押し当てられる。
「お前この数年さんざん俺さまの誘い断りやがったな!?なんでだよ!!!」
「それも会えなかった一つの原因だバカ!!」とこちらを責めるように叫ぶキバナさんに慌てて弁解する。
「いやいや!あれはダンデさんに止められてたんですって!!あまり距離が近すぎないようにと!!!」
「はぁ!?またダンデかよ!!…たく、アイツの独占欲には舌を巻くぜ」
独占欲?とはまた違うだろう。プライベートも仕事に関連させるあの人だからそう言ってただけじゃ…
と思ったことを言えば「分かってねぇーな」とポツリと呟いて
「仕事脳だけであんな敵意出されたら困るっつーの」
ハァーーーーと馬鹿でかいため息をつくキバナさんに首を傾げる。
「そんなことより、いつまでもこんなところいねぇーで、ほら」
不意に立ち上がる彼はパシリと私の手首を掴んで、グイッと引き寄せられると共に
「今から俺さまと大人のデートでもすっか」
ニヒッと無邪気に笑った。
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Omiso(プロフ) - 天音さん» コメントありがとうございます!キバナさんだけでなく、夢主まで褒めていただいてすっごく嬉しいです!それに神作だなんて…本当に勿体無いほどの素敵な褒め言葉に感激です!本当に最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年5月7日 8時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
天音 - 最高でした…!!✨とても感動しました!キバナさん カッコいい…。夢主も カッコ可愛いい…!!!神作品!! (2022年5月7日 0時) (レス) @page44 id: c80b266ed1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 葵さん» コメントありがとうございます!キバナのかっこよさにとても力を入れたのでそう言っていただけて嬉しいです!神作品だなんてそんな!私には勿体ないお言葉…感謝の気持ちで胸がいっぱいです!本当に最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年2月5日 0時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - 自分ダンデさん推しだったけどこの作品を見てキバナさんもメッチャ好きになりました!!!これはもう神作品としか、言いようがありません!! (2022年2月4日 23時) (レス) id: 6b19049b00 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - きいさん» コメントありがとうございます!貴方様のお言葉にホッとしました。この作品を書いてよかったです!最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年1月3日 0時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Omiso | 作成日時:2021年8月10日 1時