47話「やっと素直になれた」 ページ47
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毎年、桜が舞う季節になればふと彼女のことを思い出していた。
そしていつか呪詛師へ堕ちてしまった親友から救い出して見せると意気込んでいたこの"数十年"の想い。
だが、それらは全て無駄だったようだ。
桜が満開に咲き誇り、多く人が賑わう中で幸せそうに笑顔を浮かべる"三人家族"を見つけては力なく腕を下ろした。
その笑顔は果たして本物なのか分かりやしない。
だが、僕を忘れたように笑顔を浮かべでいるという事実と光景にただただ…心底憎たらしかった。
ザッと目の前に三人の行く道を阻むように立つ。
すぐに警戒したように臨時体勢を整える親友。
目を見開きその大きな瞳に僕を映す彼女。
誰?といった風に首を傾げて彼女の手をギュッと握る子供の姿。
「束の間の幸せは満足出来たか?裏切り者が」
あぁ、苦しいさ。順風満帆な家族に手をかけるのはとても苦しい。過去に変えられなかった自分がこうして未来の自分を苦しめる。
だけどもう終わりだ。何もかも終わらせよう。力を身につけて誰よりも強くなり最強になった僕にお前らは為す術もない。
スルリと鬱陶しい目隠しを外して広がった視界。色褪せていた世界が鮮やかに染まり開放感に満たされる。
ダランと下ろしていた腕を上げて中指と親指を挟み、三人に向ける。
焦ったように顔を歪ませる親友。子供を庇うようにする彼女。泣きじゃくる煩いガキ。
その中の一人、十数年の経て更に美しく綺麗になった彼女に声をかける。
「________大丈夫、お前だけは殺さないよ。A」
その言葉に子供を抱き締めていた腕を離して、ただただ瞳を揺らして僕を見つめる彼女に笑顔を向ける。
素直になれず『気づいた時にはもう遅かった』なんて過ちはしない。だからお前に会えた今、やっと素直になろうと思ったんだ。
「そこの二人をぶち殺して僕と一緒に帰ろう」
A、遅くなってごめんね。お前を取り戻す為なら慈悲を持たない悪魔にだってなってやる。
そして素直になれた今の僕は誰よりもタチが悪かった。大切だった親友よ。そして小さな生命よ。僕とAにとって邪魔なんだ。心の底から詫びるから
お前らは呪術界の為という定で俺の為に死んでくれ。
指先に収束していく力に異常を感じた有象無象の人々は散っていく。
その中でも呆然と立ち尽くす目の前の家族に告げる。
END(2)
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Omiso(プロフ) - 緑の白猫さん» 前作でも今作でもコメントありがとうございます!ドロッドロという素敵な褒め言葉、最高に嬉しいです!心情は特に意識しているのでそう言って頂けて光栄に思います!次回作を出せれた時はぜひ応援よろしくお願いします!最後まで読んで下さりありがとうございました! (2021年4月5日 14時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - ドロッドロでおっもい(超褒め言葉)好み過ぎる作品をありがとうございました! 前作も読ませて頂きましたが、どちらも心情描写が堪らなく好きです。作者様のペースで新しい作品を作って頂ければ飛びつきます。本当にありがとうございました。 (2021年4月5日 13時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - ノアさん» 最後まで読んで下さりありがとうございました!いつもは今までの作品も読んで下さっていたのかな?今作も読んで頂き嬉しい限りです!世界観を味わってもらうよう文は意識しているのでハラハラしたという感想を頂けて大満足です!今後とも応援よろしくお願いします! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - muuさん» muu様!またのコメントありがとうございます!そして最後まで読んで下さりありがとうございました!憧れである貴方様に素敵な褒め言葉を頂けて感涙してしまいそうです(泣)いつも影ながら応援しています!そしてこの作品を応援して下さり本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 虹野原さん» そして貴方様のような素敵な方に読んでもらえて心の底からこの作品を作ってよかったと思います!今後においてまた作品を作る機会では貴方様の応援を糧に全力で頑張ります!本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Omiso | 作成日時:2021年2月6日 18時