45話「青空に焦がれる」 ページ45
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薄暗い部屋でカーテンの隙間から僅かな光が差し込む。
そっと光に導かれるように覗き込めば、黒い柵の向こう側に美しい青空が広がっていた。
「A」
その声と共に後ろから抱き締められて、声がする方へ顔を向かされる。
すると、彼は驚いたように目を見開いたあと少し困ったように眉を下げた。
「何で泣いているんだい?」
あぁ、何でだろう。久しく青空を見れば恋焦がれていたあの人の青い瞳でも思い出してしまったのか。
「もしかしてお腹痛かった?」
角ばった手が伸びてきてお腹の下部分を優しく撫でる。少し膨らんだそれはもう取り除くことは不可能なのだろう。
「ううん、大丈夫」
何も大丈夫じゃない。私は大丈夫じゃないんだ。
だけど、気づいた時にはもう遅かった。
取り返しのつかない新たな命を体に宿されたのなら私はきっとこの命を見捨てられない。
生まれてくる子に何の罪もない。そうよくある理由を自分に言い聞かせる。確かに一理ある素晴らしい理由だからだ。
だけど、ごめんね。少しは恨んでしまうかもしれない。自分を最優先にして新たな命を見捨てて逃げる勇気もなく、かといって強いられたお腹の子を心の底から愛せる聖母のような寛大な心もなく。
ただただ望まない。今の現状を何もかも望まなかった。それを口にしないだけで私はずっと、あぁ、ずっとずっと、そうずっとこれから先 ________
むせ返るような、
掻き毟りたくなるような、
吐いてしまいたくなるような、
今の全てを呪って呪い続けて、腐っていくのだろう。
「フッ…クッ…クク…ハァ…ハハハ…ハハハッ…」
顔を両手で覆う。真っ白な薄暗い天井を仰ぐ。
腹の底から沸き上がる笑みにも涙にも耐え切れない。
あ゛ーあ゛!!!本当にもうどうしようもないこれからも続くであろう人生に
「どうしよっか゛な゛!アハッ…ハハハハッ!!!」
気が狂ってしまいそうだ。
いや、既に気は狂ってしまっていたか。
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Omiso(プロフ) - 緑の白猫さん» 前作でも今作でもコメントありがとうございます!ドロッドロという素敵な褒め言葉、最高に嬉しいです!心情は特に意識しているのでそう言って頂けて光栄に思います!次回作を出せれた時はぜひ応援よろしくお願いします!最後まで読んで下さりありがとうございました! (2021年4月5日 14時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - ドロッドロでおっもい(超褒め言葉)好み過ぎる作品をありがとうございました! 前作も読ませて頂きましたが、どちらも心情描写が堪らなく好きです。作者様のペースで新しい作品を作って頂ければ飛びつきます。本当にありがとうございました。 (2021年4月5日 13時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - ノアさん» 最後まで読んで下さりありがとうございました!いつもは今までの作品も読んで下さっていたのかな?今作も読んで頂き嬉しい限りです!世界観を味わってもらうよう文は意識しているのでハラハラしたという感想を頂けて大満足です!今後とも応援よろしくお願いします! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - muuさん» muu様!またのコメントありがとうございます!そして最後まで読んで下さりありがとうございました!憧れである貴方様に素敵な褒め言葉を頂けて感涙してしまいそうです(泣)いつも影ながら応援しています!そしてこの作品を応援して下さり本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 虹野原さん» そして貴方様のような素敵な方に読んでもらえて心の底からこの作品を作ってよかったと思います!今後においてまた作品を作る機会では貴方様の応援を糧に全力で頑張ります!本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Omiso | 作成日時:2021年2月6日 18時