気づいた時にはもう遅いから【呪術廻戦】

44話 ページ44

夏油サイド


馬鹿な二人だ。

手のひらでずっと踊らされていたことにも気づかず自分たちを責め続けては泣き続けて。

全ては私からのアドバイスだった。君たちの関係が拗れるように仕向け互いに想い違いになったのは全部そのせいだというのに。

健気に後悔する様は見ていて滑稽で、儚くて、美しいともいえる。


「そんな泣かないでよ。私まで悲しくなる」


腕の中で諦めたように呆然としポロポロ涙を流す彼女の髪にそっと口付けを落とす。


「Aは何も悪くないんだよ？自分を責めないで。これからは私と共に過ごして嫌なことを忘れよう」

「夏油先輩…」

「もう先輩じゃない。君は後輩でもない。いい加減下の名前で呼んで？」

「…」


ごめんね。もう私は君に優しく出来ないんだ。

彼女の首に手を添えると怯える顔。可愛いなぁ。いつかぐちゃぐちゃな顔もさせてやりたかったんだ。


「呼べ」

「す、すぐる…さん」

「まぁ、それでいいよ。今は」


ニコリと笑ってみせるが怯えた顔のまま。これから共に過ごすというのにそんな調子じゃ心がもたないよ？

あぁ、でもいっそ心が壊れてしまった方が好都合だ。きっと正常な判断が出来なくなった時こそ君の心は手に入ると思うんだ。

散々待った。手も回した。墜ちるところまで堕ちた。

じゃあ次は？親友も裏切って、彼女の恋心も潰して、その先にあるものは何だ？それはただ一つ。幸福だ。

人道から外れた者が何を得て何を為すかはもう決まっている。


「これから私が君にすること全て受け入れてね」

「ぇ…」


着いた先はあらかじめ用意していた私と君だけの部屋。そこに入った瞬間悟った彼女は逃げようと走り出す。その手首を掴んでは引きずるように寝室まで連れ込み乱雑にベットに投げる。

それでも抵抗する彼女に覆いかぶさり手足を押さえつけ封じ込めた。

本当にここまで長かった。今まで手を出さなかったことを褒めて欲しいくらい。


「やめて…ッ…！！！やだ！！離してよ！！夏油先輩、正気に戻って！！！」

「んー？聞こえないなぁ。傑ってちゃんと名前で呼んでくれないと」


血だらけのシャツを脱ぎ捨て、カタカタと震えて縮こまる彼女の頬に手を伸ばす。


「きっと大丈夫だよ。優しくは出来ないけどその分たくさんAのこと愛してあげるから」


嫌々と叫ぶ煩わしい口を唇で塞いでしまって、彼女の美しい体を隠す服に手をかけて、互いの肌を重ねて。


君の気が狂ってしまうまでずっと愛し合い続けよう。

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