16話 ページ16
食堂に着けばスラリとした背中に白い髪が見えて心臓がバクバクと高鳴る。
「悟、待たせたね」
その一言に振り返る綺麗な顔は不満そうに歪んでいるものの、夏油先輩の前だからか少し気の緩んだ表情。
「おい、傑。どこ行ってたんだよ。腹減ってんだ…け…ど…」
私の姿を見た瞬間に言葉を失い表情が強張る。そして、サッと目を逸らして何事もなかったように
「なぁ、もう先食うからな。お前ら二人で食べるなら勝手にしろ」
「違うよ。Aちゃんも一緒に食べるんだ。少し前まで悟もこうして連れてきてたじゃないか」
「…そうだっけ?」
素っ気ない返事。そしてもうこちらに目もくれずに食べ始める。
夏油先輩がいうには嫌われているわけじゃない。きっと気まずいだけなんだ。
竦む足を動かして隣の席へ座ると、またも五条先輩はピタリと動きを止める。
だけど、今度はしっかりこちらに顔を向けて
「…お前、その匂い」
もしかして香水のこと気付いてくれたのかな?だとしたらこの上なく嬉しい。やっと私を気にかけてくれるきっかけになったんだ!
「悟先輩!私、香水つけて…「ちょっと来い!!!」
突然怒鳴るような大きい声。「え?」と戸惑う私に構わず手首を捕まれ、食堂の外へと連れ出される。
困惑するまま連れてこられたのは水道のある場所。五条先輩は置いてあったバケツに水を汲み始める。
「な、何してるんですか」
「…」
そして何も答えずにある程度の水を汲み終えると問答無用でバシャ!!!と頭の上から水をかけられた。
びしょ濡れになりポタポタと落ちていく水滴。何が起きたのか意味が分からなかった。
「なぁ、お前。わざとか?」
「ぇ…?」
「香水も最近の行動も全部おかしいんだよ。急にあんな態度取って何が目的だ」
目的?目的は貴方に好かれたい。好かれたくて自分なりに意識してもらおうと努力して…
「なんだよ。その何か言いたげな顔。あるなら言えよ。なァ!!?」
ドンッと私の肩を押しては突き放し、またも大きな声に睨み付ける嫌悪に染まった顔。
…分からない。私は言われた通りした。これで成功すると夏油先輩も言ってくれたのに。なんで…なんでッ
怒られて、嫌われて、睨まれているの?
「なんで…分かり…ませんよ…ッ…」
疑問と恐怖がぐちゃぐちゃに心を掻き乱し抑えきれない思いが涙となって溢れ出る。
すると、五条先輩は狼狽るように青い瞳を揺らしては
「ッ…俺だって分からねぇーよ。お前のことが」
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Omiso(プロフ) - 緑の白猫さん» 前作でも今作でもコメントありがとうございます!ドロッドロという素敵な褒め言葉、最高に嬉しいです!心情は特に意識しているのでそう言って頂けて光栄に思います!次回作を出せれた時はぜひ応援よろしくお願いします!最後まで読んで下さりありがとうございました! (2021年4月5日 14時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - ドロッドロでおっもい(超褒め言葉)好み過ぎる作品をありがとうございました! 前作も読ませて頂きましたが、どちらも心情描写が堪らなく好きです。作者様のペースで新しい作品を作って頂ければ飛びつきます。本当にありがとうございました。 (2021年4月5日 13時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - ノアさん» 最後まで読んで下さりありがとうございました!いつもは今までの作品も読んで下さっていたのかな?今作も読んで頂き嬉しい限りです!世界観を味わってもらうよう文は意識しているのでハラハラしたという感想を頂けて大満足です!今後とも応援よろしくお願いします! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - muuさん» muu様!またのコメントありがとうございます!そして最後まで読んで下さりありがとうございました!憧れである貴方様に素敵な褒め言葉を頂けて感涙してしまいそうです(泣)いつも影ながら応援しています!そしてこの作品を応援して下さり本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 虹野原さん» そして貴方様のような素敵な方に読んでもらえて心の底からこの作品を作ってよかったと思います!今後においてまた作品を作る機会では貴方様の応援を糧に全力で頑張ります!本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Omiso | 作成日時:2021年2月6日 18時