19話 ページ19
駆け寄る夏油先輩に私の言葉は五条先輩に届かずに
向き合っていた体の向きは肩を掴まれて夏油先輩の方に向けさせられる。
そして、自分のことのように慌てて
「びょびしょじゃないか!?どうしたんだい?!あぁ、可哀想に…ッ…」
ポケットからハンカチを取り出して丁寧に顔や髪を拭いてくれる夏油先輩にされるがままただ俯く。
ほっといて欲しかった。このタイミングで来て欲しくなかった。でも心配してくれている先輩にそんなこと言えない。
「寒いよね。これで我慢できるかい?」
ある程度拭き終わると自身の上着を脱いでそっと私にかける。そして、五条先輩の方を睨みつけては
「…で、悟。その手に持ってるバケツは何かな。もしかして君の仕業なのか?」
「ハッ、そうだっていったらどうすんだよ」
そう挑発的に笑って五条先輩が答える。するとハァーと深く溜息をついては
「失望したよ。悟、君は一旦頭を冷やしたほうがいい。Aちゃんはとりあえず着替えようか。このままじゃ風邪をひいてしまう」
背中を押して私に寄り添う夏油先輩に連れられながらもパッと五条先輩の方を見ると
先ほどの笑みは無くてただ何か言いたげな顔。でも諦めたようにこちらから顔を背けては反対側に歩き出した。
所詮五条先輩にとって私はそんなものなんだろうか。
言葉も想いも伝えようとしたって無駄だったのだろうか。
「ごめんね」
突然の謝罪の声にハッと見上げると夏油先輩の眉を下げて申し訳なさそうな顔。
「水をかけられた理由って…きっと香水だよね。悟が香水を好きなのは私の見当違いだった」
「いえ、夏油先輩は何も悪くないです」
というしかない。実際、私のためにやってくれた善意を悪い方向になったとは言え文句なんて言える立場じゃない。
すると嬉しそうに笑う夏油先輩は、そっと冷え切った私の手を取って温めるように包み込む。
「Aちゃんは本当に優しいね。悟には私が後でキツくいっておくから。それにしても水をかけるなんて信じられない。悟は女の子に対するものがまるでなってない」
Aちゃんもそう思うだろ? と付け足された言葉と問いかけに戸惑う。
確かに水をかけられたことはショックだった。だけど、五条先輩を否定することが出来なくて…惚れた弱みだろうか。
特に頷くこともせずただ黙っていると、夏油先輩もそれ以上は何も言わなかった。
「……」
気に食わないようにこちらを見下ろしていることも気付かずに。
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Omiso(プロフ) - 緑の白猫さん» 前作でも今作でもコメントありがとうございます!ドロッドロという素敵な褒め言葉、最高に嬉しいです!心情は特に意識しているのでそう言って頂けて光栄に思います!次回作を出せれた時はぜひ応援よろしくお願いします!最後まで読んで下さりありがとうございました! (2021年4月5日 14時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - ドロッドロでおっもい(超褒め言葉)好み過ぎる作品をありがとうございました! 前作も読ませて頂きましたが、どちらも心情描写が堪らなく好きです。作者様のペースで新しい作品を作って頂ければ飛びつきます。本当にありがとうございました。 (2021年4月5日 13時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - ノアさん» 最後まで読んで下さりありがとうございました!いつもは今までの作品も読んで下さっていたのかな?今作も読んで頂き嬉しい限りです!世界観を味わってもらうよう文は意識しているのでハラハラしたという感想を頂けて大満足です!今後とも応援よろしくお願いします! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - muuさん» muu様!またのコメントありがとうございます!そして最後まで読んで下さりありがとうございました!憧れである貴方様に素敵な褒め言葉を頂けて感涙してしまいそうです(泣)いつも影ながら応援しています!そしてこの作品を応援して下さり本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 虹野原さん» そして貴方様のような素敵な方に読んでもらえて心の底からこの作品を作ってよかったと思います!今後においてまた作品を作る機会では貴方様の応援を糧に全力で頑張ります!本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Omiso | 作成日時:2021年2月6日 18時