40話 ページ40
「悟、ここは見逃してくれないか?Aと一度戦って疲弊しているんだ」
「尚更逃すわけねぇーだろ。何言ってんだ」
「なら私のAと戦ってもらうしかないな」
「ッ…」
きっと傑を直接狙ったとしてもAを盾にされたら元も子もない。今の俺に彼女を祓える自信なんてないからだ。
それを分かった上でニヤニヤする傑を心底許せなくて、同時に心がズキズキと痛かった。
こうも大切な存在を失っては裏切られて、もう見たくない認めなくない現実が目の前にある。
どうすればいい。傑を逃すなんて選択肢どこにもない。だからといってAを呪いとして殺すなんて俺には…ッ…
「存分に迷えばいい。悟、君が私の意見を聞いてくれるまでAには攻撃はさせるよ」
ゆらりと動いた彼女はありったけの呪力で攻撃してくる。それをかわしては防御する繰り返しで、対抗するべく術式を使おうとするが、
____出来ない。彼女にそんなこと出来なかった。
もうどうしろっていうんだよ。本当にどうしたらいい?なぁ、A。お願いだから答えてくれ…ッ…
『〜〜』
ふと彼女の声が微かに聞こえた。ハッとして見れば閉じていた口元が動き、何か言っている。
傑は気付いていない。俺だけが気付いている。だが、はっきりと聞こえない。Aは何を言っている?
危険な行為だと分かっていても彼女の手首を掴み、自分の元へと引き寄せて顔を近づけると
『祓っ…て…私を祓って…欲しい…お願い』
そう繰り返し呟いていて、無表情ながらも目元から涙を流していた。
…俺は何をごちゃごちゃ迷っていたんだ。すべきことは最初から決まっていた。Aを傑から解放するんじゃない。呪いから解放するんだ。
もう迷うことも戸惑うこともない。グッと拳を振り上げる。すると、応えるように彼女が両手を広げる。
「A何をしているんだ?!悟の攻撃を防げ!!」
傑の声に逆らえないのかすぐさま防御する体勢に入る彼女だが、もう俺には十分な隙だった。
「A本当にごめんッ…救えなかった俺を許して」
あえて術式は使わなかった。ただ呪力がこもった拳を彼女の心臓に貫通させた。
バシュッと真っ赤な血が飛び散り、肉を抉る感触が肌に伝わる。
だが、目の前の彼女は痛そうにもしない。ただその頬にはもう涙は流れておらず、真っ暗な瞳でこちらを見つめて微笑む姿。
『ありがとう』
その言葉に救われると同時に泣きそうになるのを堪えては微笑み返した。
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Omiso(プロフ) - てんぎつね。さん» コメントありがとうございます。そう言われて実際自分でやってみたんですけど想像以上に痛いですね(笑) (2021年7月28日 23時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
てんぎつね。 - いや親指は反り返したら痛い (2021年7月28日 23時) (レス) id: 04fcd4138c (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - るりさん» るり様、コメントありがとうございます!貴方様のお言葉に嬉しさで胸がいっぱいです!そして、貴方様の作品を読ませて頂いております。今後の更新楽しみにしています!応援ありがとうございます!貴方様にも私からのエールを。 (2021年6月5日 14時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - 最高な作品をありがとうございます。ほんとにその場にいるような臨場感や、細かく描かれる表現方法であっというまに読んでしまいました。これからも作品楽しみにしています! (2021年6月5日 11時) (レス) id: 82fe86bccf (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 緑の白猫さん» コメントありがとうございます!読者様がゾクゾクするようなホラー×ヤンデレを感じて頂けていたらと思います!夏油の術式を上手く活かせることを目的にしていたので貴方様の褒め言葉本当に嬉しく思います!最後まで読んで下さりありがとうございました! (2021年4月5日 14時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Omiso | 作成日時:2020年12月17日 19時