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38話 ページ38

夏油サイド


ハァハァと自分の荒い息遣い。そして目の前には呪霊となった彼女が横たわり苦しそうにもがいている。

激しい争いで元の場所から随分離れてしまったな。まぁ、別にどうでもいいんだけど。


「ここまで手こずるとは…私をそんなに呪って力を得たんだね。君のその憎しみはこれから先のためになる。さぁ、私の呪霊となり共にいてくれ」


ズズズと彼女を黒い球に閉じ込めていく。すると化物じみていた姿が剥がれ落ち、生前のウエディングドレスを身に纏う美しい彼女が現れた。

瞳をこちらに向けてはただただ悲しそうにボロボロと涙を流す。


『嘘ツキ…アナタが…幸せを…願ってくれたのに…アナタ…のせいで…カナワナカッタ…』


その言葉を最後にパシリと手元の黒い球に収まった。


「嘘じゃないよ。幸せになって欲しいと願った結果がこれなんだ。ただ猿のまま、また猿に愛を注ぐだなんて不幸だ。それなら私の為の力となり、側にいた方が幸せだ」


黒い球を口に含めて呑み込んだ。何とも言い難い今まで以上の苦さを感じた。


「…出ておいで、A」


名前を呼べばズズッと真っ赤に染まったウエディングドレスを着た彼女が新たに現れる。

そんな彼女は表情がなく、生気のない真っ暗な瞳でこちらを見据えていた。


「ッ…綺麗だ」


震える両手を伸ばし、引き寄せては抱き締めた。やっと願っていた形で彼女が手に入った。


「完全に君はもう私のものだ。これからは共に新たな未来を築こう…愛しているよ」


頬に手を添えて顔を近づける。瞬き一つせず、抵抗すらしない彼女に一方的な口付けを交わした。

…冷たい。とても冷たく何も感じない口付けだ。本当に人間味を失った彼女。だがそれでも私は_____


「君を愛すよ。呪いとしての君をずっと…ずっとね」


いつまでもいつまでも二人だけの時間が続けばいいと思った。だが、その願いは叶うことはなく、

上空からドコンッ!!!と勢いよく着地する音。そして砂埃が舞う中で青い瞳を見開いては私をギロリと睨み付ける懐かしい人物。

いつの日か見た光景だと思いながら怒り狂う五条悟に目を向けた。


「お前…お前がAを殺したのかよッ…傑!!!」


彼の腕の中に大事そうに抱えられている彼女の遺体。

あぁ、やはり猿の時よりも今の呪いの彼女の方が断然に美しい。


「殺してなんていないさ。だってほら、Aならここにいる」


呪いとなった彼女を見せれば、悟はゾッとしたように愕然としていた。

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Omiso(プロフ) - てんぎつね。さん» コメントありがとうございます。そう言われて実際自分でやってみたんですけど想像以上に痛いですね(笑) (2021年7月28日 23時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
てんぎつね。 - いや親指は反り返したら痛い (2021年7月28日 23時) (レス) id: 04fcd4138c (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - るりさん» るり様、コメントありがとうございます!貴方様のお言葉に嬉しさで胸がいっぱいです!そして、貴方様の作品を読ませて頂いております。今後の更新楽しみにしています!応援ありがとうございます!貴方様にも私からのエールを。 (2021年6月5日 14時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - 最高な作品をありがとうございます。ほんとにその場にいるような臨場感や、細かく描かれる表現方法であっというまに読んでしまいました。これからも作品楽しみにしています! (2021年6月5日 11時) (レス) id: 82fe86bccf (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 緑の白猫さん» コメントありがとうございます!読者様がゾクゾクするようなホラー×ヤンデレを感じて頂けていたらと思います!夏油の術式を上手く活かせることを目的にしていたので貴方様の褒め言葉本当に嬉しく思います!最後まで読んで下さりありがとうございました! (2021年4月5日 14時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Omiso | 作成日時:2020年12月17日 19時

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