29話 ページ29
五条サイド
感動もクソもないアイツの最後の言葉。
「…まぁ、Aらしいか」
既に見えなくなった彼女の背中から目を逸らし、さっきから後ろでチラチラとうっとおしい気配に声をかける。
「傑。いい加減そんな所にいないで降りてこい」
「…バレていたのか。昨日悟とは喧嘩したばかりで顔を合わせるのが気まずくてね」
「別に喧嘩のことなんてどうでもいいだろ。てか気まずいなんて思ってねぇーくせに嘘つくな」
「ハハッ、それもそうだな」
タッと上から降りてきた傑は俺の隣に並ぶ。そして、Aが去った先を熱心に見つめる姿に
「よかったのか？別れの挨拶もしないで。最近アイツのこと気にかけていただろ」
まぁ、気にかけていたどころじゃなさそうだけど。
「いいんだよ、私は昨日のうちに済ませたからね」
「はぁー？そんなこと聞いてねぇーぞ。いつ、どこで、何言って別れの挨拶したんだよ」
「そんなに知りたいのかい？だけど教えられないかな」
「あ゛？んでだよ」
「そうきれないでくれ。誰でも秘密の一つや二つ抱えているんだよ。親友でも話せない秘密をね」
そういっては俺に見向きもせずAが行った道の先を見つめる。本当に話したくないのか、話す気がさらさらないのかそれ以上口を開かずに沈黙が流れる。
「…あー、じゃあ聞かねぇーよ。別の質問がある」
「え、まだあるのか」
ぶっちゃけさ、気になって仕方がなかったんだよ。ここ数日のAに対しての行動も態度も、
「お前、Aのことどう思ってた？」
そう聞けばやっとこちらを向いて目を見開く傑。そして、考え込むように顎に手を当てて悩みに悩んだあと
ゆるりと口元を緩めては目を細めて何処か恍惚として
「唯一、希望を持てた存在だよ」
てっきり「少し気になってた」なんていうと思ったが違った。希望って意味わからねぇーし。しかもなんつー顔してんだよ。こわっ。
思わず顔をしかめる俺に対して傑は言葉を付け足して
「これから先、ある時、ある瞬間をもって、私はあの子を心の底から…愛せるよ」
「……は？愛せる？お前…え？」
何言ってんだよ冗談か？とからかってみたが、傑は相変わらず気色悪く微笑んでいた。
だが、その時の俺は特に深く考える事はしなかった。
＿＿＿＿次の日、傑は自身の両親と100人あまりの非術師を虐殺する大事件を起こしたあと、
高専から行方をくらまして二度と帰って来なかった。
30話「Don't Cry over spilt milk」→←28話
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 549人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Omiso(プロフ) - てんぎつね。さん» コメントありがとうございます。そう言われて実際自分でやってみたんですけど想像以上に痛いですね(笑) (2021年7月28日 23時) (
レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
てんぎつね。 - いや親指は反り返したら痛い (2021年7月28日 23時) (レス) id: 04fcd4138c (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - るりさん» るり様、コメントありがとうございます！貴方様のお言葉に嬉しさで胸がいっぱいです！そして、貴方様の作品を読ませて頂いております。今後の更新楽しみにしています！応援ありがとうございます！貴方様にも私からのエールを。 (2021年6月5日 14時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - 最高な作品をありがとうございます。ほんとにその場にいるような臨場感や、細かく描かれる表現方法であっというまに読んでしまいました。これからも作品楽しみにしています！ (2021年6月5日 11時) (レス) id: 82fe86bccf (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 緑の白猫さん» コメントありがとうございます！読者様がゾクゾクするようなホラー×ヤンデレを感じて頂けていたらと思います！夏油の術式を上手く活かせることを目的にしていたので貴方様の褒め言葉本当に嬉しく思います！最後まで読んで下さりありがとうございました！ (2021年4月5日 14時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Omiso
| 作成日時：2020年12月17日 19時
