61話 ページ21
貴方サイド
分からない。
目の前の彼が目元から血を流し、ボロボロと血と共に涙を零す理由が、
分からない。
目の前の彼がひたすら私に愛を欲している理由が、
分からない。
目の前の彼になぜか愛を伝えることができない理由が、
全部、全部分からないの。
そして、自身がひたすら"誰か"が愛おしくて、誰かを想っていて、誰かに愛を伝えたくて…
誰かも分からない、姿も分からない、そんな誰かをただただ想っている。
「荼毘…泣かないでよ。私は貴方の側にいるから」
心から愛せないのは確かだけど、何十年も愛してくれて、大事にしてくれたのは彼だけで、
その恩といったら可笑しいのかもしれないけれど、名前を呼んで、側にいて、抱き締め返して、
こんな崩壊した社会の中で共に彼と過ごそうと思う。
それに…
どちらにしたって、"何故か"私の記憶の中には目の前の彼の存在しか残ってないのだから。
「…ッ約束だからな。ずっと俺の側にいろ」
「うん、約束」
「俺以外の名前も呼ぶな」
「うん、もちろん」
「そんで…お前の温もりを感じさせてくれ」
「うん、分かった」
抱きしめる力を強くして彼を包み込むと彼は私よりも大きく包み込んで離さない。
そして、また目元から赤い涙を流して肩を震わせ泣いていた。
そんな彼にかける言葉も見つからずに、
ただただ全てから背けるように目を瞑って、
真っ暗な視界の中で、愛してやまない誰かを思い浮かべて
呟いた言葉は誰にも届かずに消えていった。
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Omiso(プロフ) - ユリさん» 最後まで読んで下さりありがとうございました！貴方様を楽しませられたこと心から嬉しく思います！本当にありがとうございました！ (2020年9月1日 9時) (
レス) id: 9c7156f888 (このIDを非表示/違反報告)
ユリ(プロフ) - 凄く楽しかったです！ (2020年9月1日 0時) (レス) id: a96c1cf246 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - シラユキさん» 最後まで読んで下さりありがとうございます！貴方様にそう思って頂けてとても嬉しく思います！こちらこそ素敵なコメントをして下さり本当にありがとうございました！ (2019年12月18日 23時) (レス) id: 377f79ecdf (このIDを非表示/違反報告)
シラユキ(プロフ) - ラスト、泣きそうになってしまいました！！ どのページも楽しみながら読み進めることできました！！ 本当に最高の作品をありがとうございます！！ (2019年12月18日 23時) (レス) id: 4aa4850497 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - ひまりさん» 最後まで読んで下さりありがとうございます！貴方様から何度もコメントが来るたびにとても励みとなっていました！そして、この作品を褒めて頂けてとても嬉しく思います！本当にありがとうございました！！ (2019年11月22日 20時) (レス) id: 1a1ef423e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Omiso
| 作成日時：2019年11月8日 22時
