三百二十一番星 ページ1
『師範、聞こえますか?…師範ッ!!』
どれだけ揺すっても起きない。
血が止まらない。
体が冷たい。
鳴呼、死んでしまったのか。
私が、任務後に寄り道などしたから。助けてくれたお礼にと言ってもてなしてくれた邸宅に泊まらず、真っ直ぐ帰ってくればよかったんだ。
そうすれば、助けられたのに。
そうすれば、鬼を殺せたのに。
許さない。鬼を、私自身を。
『くそ……、っ!?』
鬼への憎悪と自己嫌悪に苛まれ、背後から襲ってくる鬼に気づかなかった。
深く、爪で背中を裂かれる。
・
暗転
・
「…………ぇ、……ちゃん?ねぇ……」
意識が浮上すると、私は何処かの屋敷で夕餉を食べていた。小さな子供が三人、そしてその親と祖母も居る。
「ねぇ、お姉ちゃん!聞いてる?」
『え?
……あ、鳴呼、すまない。少し考え事をしていた』
「こら、駄目でしょう。
鬼狩り様は疲れてらっしゃるのよ。あんまり我儘言ってはいけません。助けていただいたばかりだと言うのに…」
助けてもらったばかり…?
先刻まで私は、師範の屋敷に居た筈。此処は鬼から助けた家族の屋敷。
……もしかして、師範が死ぬ前に戻った?
「いいじゃん少しくらい!」
「鬼狩りのお姉ちゃんって、目がすっごく綺麗だねぇ!」
『そうか?ありがとう。
君も緑の綺麗な瞳をして、いる……』
緑色の、瞳。
心臓がドクンと脈打つ感じがした。
何だ?何故こんなにもざわつく?
「ええ、とても素敵な目をしてらっしゃいます」
「私、お姉ちゃんに会えてよかった!」
『そうか。そう言ってもらえると嬉しいな』
一番歳上であろう女の子が、私の近くに寄ってくる。この子は長い前髪で片目を隠していた。
なんだろう、この既視感は。
「……縁起悪いかもしれないけど、鬼がいなかったら、お姉ちゃんに会えてなかったから…鬼さんにはちょっとだけありがとうって言いたいなぁ」
『!!』
もし居なかったら、オレ達とAは会えてなかった。ちょっとだけ感謝だな!
ガタッ
「お、鬼狩り様!?どうなさいましたっ…?」
そうだ、そうだった。
緑色の瞳に、片目を隠す髪型に既視感を覚えたのは、彼らと同じだったたから。
今の言葉に突き動かされたのは、彼奴の言葉に似ていたから。
私は大罪人が一人ーーー夜凪Aだ。
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ミルクレープ(プロフ) - こはねさん» ほんとにいつもありがとうございます!!超励みになります😭✨更新不定期なのに待っていてくださって、ほんと感謝です!!!これからもよろしくお願いします〜💖💖 (2023年3月11日 23時) (レス) id: fa8d766c94 (このIDを非表示/違反報告)
ミルクレープ(プロフ) - こはねさん» ハートの通知は区切りのいいとき(10個押されました、など)に来るようになってます!誰が押したかはわからないです!いえいえ全然!!こはねさんはいつもコメントくださるので嬉しいです!!コメント1つでハート100個分くらいの嬉しさがあります💞 (2023年3月11日 23時) (レス) @page48 id: fa8d766c94 (このIDを非表示/違反報告)
こはね(プロフ) - 来るんだったら、私こんなにコメントしてくる癖にハート押さずに終わるなんて酷すぎないか、、!?と思ったところです、、、、。 (2023年3月11日 23時) (レス) id: f36870967d (このIDを非表示/違反報告)
こはね(プロフ) - 私続きが気になりすぎて、ハート押さずにすぐ次にいくんですけど、ハート押したらこはねさんがハート押しました的な通知って来るんですかね、、?? (2023年3月11日 23時) (レス) @page47 id: f36870967d (このIDを非表示/違反報告)
ミルクレープ(プロフ) - こはねさん» この終わり方自分的に大満足だったのでそう言っていただけて嬉しいですෆ この先ちょっとストーリーが精神的ダメージ大きいので…何回か書き直すかもです……。どんどん更新していきますね!コメントありがとうございます⸜(*ˊᵕˋ*)⸝ (2023年3月9日 23時) (レス) id: fa8d766c94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミルクレープ | 作成日時:2022年8月16日 13時