【WT】顔も知らぬ貴方から【Kiriyan】 (ページ4)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:10,334 hit

#こページ4

side Your

さぁそろそろ黄島さんが来る時間だ。どんな奴だろうか、という事を考えて居ると、少し控えめにドアを開けて小声で“失礼しま〜す・・・”と聞こえたので其方を見た。

が、私はその瞬間驚愕していた。
何故なら、彼は私の好きな人だったから。顔だけは知っていた。名前なんて分からなかったから、顔が一致しない理由が分かった。
私が好きなのは黄島さんだったんだ・・・

時は一年前の入学式の次の日に遡るが。

.

入学式の後日、授業が始まるといってもガイダンスなどくらいで授業という授業は殆どしなかった。
只、学校を見て回るなどの事はせず、教室の場所は各々放課後とか使って覚えて、というまぁ鬼な先生が居た訳で。

私は部活見学のついでに学校の内装を覚えようと色々校内をウロウロしていた。
階段を降りようとした時、私は階段を踏み外してしまい、前傾姿勢に転ぶような体制になっていた。

頭打つなぁと思った時、それを助けてくれたのが黄島さんだった。
彼はたまたま後ろに居たのか、はたまた意図的に着いてきていたのかは分からない。
彼にお礼を言おうと思ったらもう先に行っていたので私は、ありがとうございました、とお礼を一言だけ入れて去った。

.

その時は多分一目惚れだった。
黄島さんはこの事は知らないが、私と彼は半ば両思いみたいな関係だった。

「Aさん？」

『あぁはいはい』

「ずっと下向いてましたけど・・・体調悪いですか？保健室連れて行きますよ」

『いや、大丈夫です。私、ずっと下向いてました？』

「ずっとではないですけど・・・“私は満足です”って言った後辺りから・・・」

こんな時まで私の心配ばっかり・・・
もっと好きになっちゃいますって・・・
労わってくれたり心配してくれたりする彼は相当優しいんだな、と思った。

「・・・俺が心配してあげる子はAさんだけですよ」

『私の事好き過ぎですね』

「そりゃあ、コントロールが効かないくらいには貴方に惚れ込んでますよ。脳内には必ずと言って良いほどAさんが居ますし」

『もう十分です、恥ずかしくなってきますから』

私の前で恥じらいも無く惚気話をする彼。でも、嬉しかった。
恥ずかしさでショートしてしまいそうなので、もう帰ろうと思ってドアの方を見る。
・・・そうだ、返事、明日辺りに返そうかな。

『返事、明日まで待って下さい』

そう言い残して教室を出ようと思った。
しかし、彼は私の腕を掴んで引き留めた。