#58 ページ16
翌日。誘ったのはいいものの、果たして笑琉は来てくれるのかな、という事がずっと頭に残っていて寝付きが悪かった。
不安でいっぱいだが、外出する準備が整ったので靴を履いて家の外に出る。
『・・・はぁ』
重い足取りでとぼとぼと公民館に向かう足を進める。
.
side Smile
冬休み明け初日の朝、いつもと同じ時間に家を出たが何時まで経ってもAが家から出てこない。
凛も一向に来ない俺達を不審に思ったのか、此方まで来ていた。
rn「Aは？」
sm「知らん。ずっと出てこないんだよ」
rn「Aから連絡きてないの？」
sm「連絡きてたらこうやって待ってないだろ」
rn「家の鍵開いてた？」
sm「・・・確認してない」
「鍵かけてあったらAはもう家から出てるって事だと思うけど」
と、凛は徐にAの家のドアノブをガチャガチャとするが、どうやら鍵はかけてあるらしい。
という事はAは既に学校に向かっているという事になるのだ。
sm「はぁ〜・・・」
rn「なに、Aが隣に居なくて寂しいの？」
sm「さぁ、そうなんじゃないの」
rn「やけに素直だね、珍しい」
sm「ニヤニヤしながらこっち見んな気持ち悪い」
rn「一応私も女なんだけど」
sm「あぁ、すまん」
rn「絶対謝る気無いじゃん」
.
放課後、部活が終了したのでAと凛が待っているであろう校門に向かう。
彼女に近づいても、俺の存在に一切気付く事無く、どうやら独り言のようなものをブツブツと呟いていた。
不意に、彼女が『やめておこうかな』と言ったのだけがはっきりと聞こえたので、Aを揶揄う次いでに俺は「何が？」と彼女の独り言に返す。
すると、Aは俺の声に驚いたのか、肩をびくりと揺らし、驚いた声を上げて此方を向く。
軈て俺達は帰ろうと歩を進めるが、周りの冷たく凍てつく空気に伴い、俺達の周りも沈黙が続いているので冷酷な雰囲気があった。
急に彼女が立ち止まり何か言おうとした。
どうやら“朝の事”に関する話らしい。Aは俺が怒っているのでは、と考えていたのだろうが、怒っていない、と返すと彼女は安堵したような表情を浮かべていた。
早く帰ろうとAを置いて歩くと、後ろから彼女が『歩くの速い』と言うので仕方なく彼女を待つ。
相変わらず、歩くの遅せぇな。
Aにデリカシー無いと言われたが俺にはそんなの知った事では無いが。
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作者名：七瀬紫苑(レイピアさん。) | 作成日時：2021年2月14日 21時
