まっしろなあい ページ14
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起きたら終点だった。
「白尾駅」という看板のある駅はとっても広くて大きな駅で、迷いそうだったけど人の流れに沿ってどんどん外へ出ていけた。
都会外れの郊外は絵本やお話よりも賑わっていて、なんだかピシッとした都会よりも何倍も暖かく、素敵な様に見える。
商店街を進んでいけばまるで昔の様なお店やらお家やらが並んでいて、これがレトロなんだなって初めて理解できてしまった。
物心ついてから初めて、自分でものを買った。自分で選んで自分でレジまで行くその高揚感。
いろんな人とお話しする楽しさと時間の経つ早さ。
私は、ずっと前に無くなっていた感情が昂って破裂してしまいそうだった。
夕方、空が赤に染まってきた頃。今日はどこで、寝泊まりしたらいいんだろう。
よく考えたらそうだった。スマホもないから調べられない。荷物だって運動ができなくなった私には重すぎるものを抱えている。
良い加減帰りたいけど、まだもっと遊ばないと次遊べるのはいつになるかわからない。
もしかしたら最後になるかもしれないのに。
一旦まだ街の構造がわかる家の近くに帰ろうと駅に向かって足を向けたその時だった。
「…漸く見つけた。」
よく知った声が私の耳を貫く。
気のせいだって言うには可笑しく、振り返るしか選択肢はない。
『しゃ、しゃーくん、』
名前を呼んだ瞬間、きつくきつく、抱き締められた。
きっとこれはそんな甘いものではなく、拘束と言った方が似合うだろうけど。
「おら、帰ンぞ。」
ちゃりん、私の首には緑色の首輪が巻かれ、伸びている紐はシャークんの手に握られていた。
まるで幼子があらぬところへ行かぬ様にする輪っかの様で。
鬱陶しくて張り詰めた糸を手で掴む。振動が伝わったのか、シャークんがこちらを振り向いてこう言った。
「たった一日でこんな悪い子になんのかよ」
ぴたりとおっきな車の前で止まる。後ろの席のドアを開けて一緒に入る。
「なァ、なんで今日逃げた訳?楽しかったか?」
勝手に発信した車にエンジン音が嫌に響く。助けを求めて周りを見ても運転席は壁に隔てられて見えないし窓も薄暗く外は見えたものではない。
急かす様に首輪の紐が引かれた。
「俺は最悪だったんだけど。」
ギロリと、彼の刺々しい視線が私の心を貫いて爆かれた。
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天薫茈雅(プロフ) - ほうき星さん» コメントありがとうございます!ご丁寧な選び抜かれたお言葉での賛美、ありがとうございます。当方あまり文字を綴るのが得意では無いため、そう言っていただけますととても嬉しいです。更新は遅くマイペースですがお付き合い頂けますと幸いです。 (4月11日 0時) (レス) id: c24003a2ad (このIDを非表示/違反報告)
ほうき星(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます。小説の世界観が本当に好きで作者様の選ぶ言葉の1つ1つが本当に丁寧で主人公の心の苦しさとかキャラクターの愛の深さに感動しました。 (4月10日 15時) (レス) id: 43360d69cc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あめ | 作成日時:2024年1月21日 20時