空白が四十。 ページ41
どこか、深い深い所に眠っていた。
目が覚めると重力は感じなくて、水の中だと気がついた。
焦って目を瞑り空気が漏れないよう手で口を押さえる。
だが、何時まで経っても苦しさは無く、目を開けても痛くはなかった。
それに、怪我が全て消えている。
周りを見ても、何も無い。水の中だと云うには少し可笑しなところが多かった。
魚は一匹もいないし、それに加えて息ができる。
考えられる説を上げるにはこの空間は不思議すぎたのだ。
落ちていく感覚が、怖くなかった。何故かは判らない。只、無音で、泡だけが静かに音を立てて上に上がっていく。
それを眺めるだけ。
口を開けると、泡が出てきてまた上に昇る。
「...ぁ」
声を出してみる。どれだけ出していないのか、掠れた声だった。
そう云えば、と思い出したのはAが最後に覚えている瞬間。
血を流しすぎて、その上黒虎の一撃で自分の生命の終わりを悟った。そして、敦の腕の中で__死んだ。
もうあんな未来を迎えなくて済むのなら、なんだってする。してきた。
もうこれで、あの記憶が塗りつぶせるだろう。
足が海底の底についた。
身体を浮力に任せて倒れ込む。
心地良かった。
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作者名:みるくてぃー | 作成日時:2019年9月8日 13時