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回向(其の壱) ページ29

結局、人を傷付けることでしか人を守れない。




「準備はどうですか、Aさん」




人の声がした。

私の嫌いな声だ。




「…はい」




感情を押し殺した声で、私もそれに応えた。


立ち上がり、慣れた手つきで銃に弾を入れる。


あの時兄も、こんな気持ちだったのかな。

なんて、今必要ない事を考える。全てを思い出した後の今のこの状況は、正直云うと最悪だ。

それでも、私は。




「行ってきます」


「行ってらしゃい、Моя принцесса(ぼくの姫君)




♢♢♢♢♢




「Aの事について、与謝野女医から連絡があってねえ」




敦だけでなく、その場にいた芥川も反応した。




「何処にいるか判ったんですか!?」


「…Aは探偵社を辞めた」


「!何で…」




太宰は手に顎を当て、考える様子を見せ、その後敦に向かってにっこり笑い、その内判るさ、と云った。




「探偵社を辞めた…?」




Aは行方不明になったと聞いていた芥川も、顔には出さずとも探偵社を辞めた事には驚いているみたいだった。

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作者名:みるくてぃー | 作成日時:2019年6月16日 10時

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