最後の大君(壱) ページ22
相手が判ってAと太宰が揃って通話終了の釦に手を伸ばした。
『待て、切らないで』
すると、何故判ったのか森の焦る声がする。
「どうしたんですか、森さん。マフィアと探偵社は協定を結んだ筈です」
少し苛立ちながら、Aが太宰の代わりに云う。
次に森が云う言葉は、Aには予想外の言葉だった。
『その協定だが今部下から報告があってねぇ…
守れそうもないのだよ』
「!?」
それを聞いて、Aは驚きつつも無言で太宰の指示を仰いだ。
「大丈夫、想定済みだ」
太宰はAを見て、落ち着かせるように云って頷いた。
「芥川君の独創癖は相変わらずだなぁ…仕方ない」
溜息を一つ吐いてから、インカムに向かって太宰は云う。
「敦君、彼に係っている暇はない。先に進もう」
『ですが』
「大丈夫、私の云う通りにすれば問題なく逃げられるよ。先ず__」
作戦を敦に伝える太宰。それを聴きながら、Aは、少し芥川を不憫に思った。
「一寸可哀想ですね…太宰さんも酷いことする」
「この位は仕方ないさ」
彼は平気でそう云った。そして次に鏡花の方に繋げる。ここからはAの仕事だ。
「鏡花ちゃん、聞こえる?私だよ」
喋りかけるが、応答が無かった。
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作者名:みるくてぃー | 作成日時:2019年5月27日 19時