天才？ 全部才能のおかげにしないでくれます？【wrwrd】

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俺の言葉に、大先生は顔を歪ませる。あー、大体わかった。あの人か。

Aさん。この国の天使と呼ばれる、いつも笑顔な可愛らしいこの国唯一の女性幹部。拷問官やって聞いたけど、実際にその仕事をしている所を見たことがあるのはオスマンさんとトントンさん、そして総統のグルッペンさんだけ。
よく色々な部隊に差し入れを持って行っているのを見る。かく言う俺も何回かは貰った。
一般兵たちには大層な人気やからな、拷問官っていう職業自体この国では幹部以外は知らんことやし、彼らにとっては最も身近な幹部なんやろう。

その代わり、幹部たちには随分と嫌われてるみたいやけど。まぁ、戦闘もせん、作戦立案にも立ち会わん、射撃場でも姿なんて一度も見たことがない…となればそうなるのも至極当然のことやと思うけど。


「チーノ？くん？も大変やなぁ。あんな能無しに気に入られて。幹部って言ってもあいつは名前だけやし。」

「そんな弱いんですか、あの人。」

「弱いっていうか…そもそも戦わんから。いっつも戦闘は僕ら任せ、自分は城の中で安全に高みの見物やからな。他の奴らは天使やって言うけど、僕からしたらあれはただの傲慢な姫さんよ。」


大先生はそこで言葉を切ると後は聞かんといてとでも言わんばかりにヒラヒラと手を振る。後は自分で考えろってことか。

確かに鬱兄さんや他の幹部の人らの話だけ聞いてればあの人は幹部にはふさわしくないんだろうけど。でも俺にはどうしてもあの人がそんな人やとは…。


「あー！ 大先生が遅刻してへん！」

「ほんとだ、珍しいこともあるもんだね。明日は雨かな。」

「雨っていうか槍でしょ。まだ死にたくないめう〜！」

「お前ら勝手言い過ぎやろ！ シャオちゃん、僕の隣空いてんで♡」

「俺ショッピくんの隣座るからえぇわ。」


騒がしい声に思考が止まる。ゾロゾロと入ってきたシャオロンさん、ひとらんさん、オスマンさんが大先生を茶化しながら席に座る中、入口に目を向ければトントンさんと楽しそうに談笑しながら入ってくるあの人の姿。

…誰よりも優しそうな人やのにな。

人は見た目によらん。わかってたことやけど、やっぱ世知辛い。

交わってしまった視線を不自然なぐらいに逸らした。

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