閑話【ある日の。中編】 ページ36
『おはよう！』
「…おはようって、もう昼だろう。」
小屋の扉を開けて、中に入ると、あの少女が出迎えた。
銀髪がさらりと揺れる。紫色の瞳が、ゆっくりと細められた。
少女は、最初にあった警戒心はどこへやら、今はこんなにも華やかに笑う。
『1日の中で初めて会ったのだから、おはようでも良いんですー』
子供っぽく、ふいとそっぽを向き、さらさらと揺れる銀髪。
少女は、姫様が織ってくださった薄紫色の着物を着ている。薄汚れた服を身に纏っていたのを、若が気を利かせて取り替えさせたのだ。
しかし、裾が長くて動きにくいのだろう。
本棚から新しい本と読み終えた本を入れ替える時、彼女はわざわざ立ち上がらなくても良いのに、1度立ち上がって裾を直すのだ。
俺は机に、持っていた風呂敷包みを置くと、包みを開く。
昼餉だ。俺が作ったものだから、酷く簡素ではあるのだが。
本当は、姫様あたりが作っていたのだが、若も姫様も、里の長や巫女を継ぐ習い事が忙しくなってきたため、俺が作り始めた。
少女は、干した肉や魚を焼いただけの昼餉を見て、目を輝かせる。
『わぁ！今日も美味しそう！いつもありがとう！』
手を合わせて、『頂きます』と言うと、早速食べ始める。
少女は、食事はする必要はないようだが、里長から「手懐けるように」と言われているため、日に一度、食事をするためにこうして持ってきている。
持ってくれば大人しく食べるのだ、この少女は。
少女が美味しそうに食事をするのを見て、俺も自分の分を食べ始めた。
食べ終えると、少女はまた読書を開始する。
記憶はなくとも文字は読めるようで、ここの本棚を大変気に入っているようだった。
全て、この森で冒険者が落としていったものだから、あまり良いものはないだろうに。
高価だと言われる紙はもうボロボロで、今にでも破けてしまいそうなものばかりだ。
パラッと、少女は頁を捲る。
今日、俺は非番だ。
普段は仕舞ってある武器を取り出すと、手入れを始めた。
一瞬、少女からの視線を感じた気がしたが、すぐにその気配は消えた。
多分、非番であることを察したのだろう。
パラッと、頁を捲る音だけが室内に響く。
あまりにも、静かだ。
…いつもそうだ。
一瞬だけ少女は、年相応の反応を示すのに、すぐに大人しくなる。
それはどこか寂しい気もした。
だがそれ以上に、この空間にいつも、俺は心地良さを感じている。
里で、若たちと戯れている時よりも。
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ミナ(プロフ) - 夢見る雀さん» ありがとうございます(´；ω；｀)そう言っていただけるなんて感激です！頑張ります！！(´TωT｀) (2019年10月14日 21時) (
レス) id: 13cdda6338 (このIDを非表示/違反報告)
夢見る雀(プロフ) - この小説めちゃくちゃ好きです！更新頑張ってください！ (2019年9月27日 5時) (レス) id: fa272da316 (このIDを非表示/違反報告)
ミナ(プロフ) - 3626 5503 63さん» ありがとうございます！(´；ω；｀)ゆったり更新ですが、がんばります！ (2019年8月21日 1時) (レス) id: 13cdda6338 (このIDを非表示/違反報告)
ミナ(プロフ) - かぐやさん» そうですよね！アニメ2期も楽しみです(*^^*) (2019年8月21日 1時) (レス) id: 13cdda6338 (このIDを非表示/違反報告)
3626 5503 63 - 更新大変かもしれないけど 頑張って下さい！ (2019年8月13日 10時) (レス) id: 878066c85e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミナ | 作成日時：2019年6月29日 0時
