32【オーガの。10】 ページ33
『…実は、先程こちらの方にも言った通り、私には記憶がありません。』
私は深呼吸をして、続きを話す。
『…だから、少しの間でも、身を寄せる場所が欲しいのです！』
だから、オーガの里で身を置かせてください！！
しんと、静まる部屋。
ご老人さんは目を閉じて考えるように。
若さんは目を見開きながらも、表情は少し悲しげで。
私の視界に、少しだけ入る青髪のオーガさんは、目だけがこちらを向いている気がした。
無理な話かもしれない。
でも、スキルさんの言っていた"意見"。それが大丈夫だと私の背中を押してくれていた。
つい先程、スキルさんはこう言った。
《人間の街に住むドッペルゲンガーという魔人は、人間にしか興味を示さない魔人です。ある程度成長しています。ですから、他の魔物や魔人から接触されることはまずございません。》
《しかし、
……そう、私が何故あんなに疑われていたかというと、単純にドッペルゲンガーという種族だから。
いくら小さいとはいえ、『姿見』や『透過』なんてスキルのある種族だ。何が起こるかわからない。
だけど、逆に言えばドッペルゲンガーという種族だから、価値が出てくる。
味方につけて、飼うことが出来るのならば、どこよりも情報を得ることが出来るということだ。
魔物も情報戦は大事だ。
私は未だに返答をくれない三人を、もう一度見回す。
すると、ご老人さんが口を開いた。
じっと、私を見据えている。
「…お主、種族は？」
…ほらきた。
初めて見た時から気づいてはいたけれど、きっとこの人が物知りさんなのだろう。
だから、一番ドッペルゲンガーのことを知っているはず。
多分、青髪のオーガさんも軽く知っていたから、私をここに連れてきたのだろうけれど。
私は、ご老人さんを見据えると、口を開く。
『ドッペルゲンガーです。』
右隣の青髪のオーガさんが、身じろぎをする。
ご老人さんは、髭を撫でる。
「…自分の種族についてはどれくらい知っておる？」
…やっぱり。
私は確信した。もう、取引は成立したも同然だろう。
ゴクリと唾を飲み込んだ。
『…少なくとも、価値くらいなら。』
キラリ。ご老人さんの目が光った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 49人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミナ(プロフ) - 夢見る雀さん» ありがとうございます(´；ω；｀)そう言っていただけるなんて感激です！頑張ります！！(´TωT｀) (2019年10月14日 21時) (
レス) id: 13cdda6338 (このIDを非表示/違反報告)
夢見る雀(プロフ) - この小説めちゃくちゃ好きです！更新頑張ってください！ (2019年9月27日 5時) (レス) id: fa272da316 (このIDを非表示/違反報告)
ミナ(プロフ) - 3626 5503 63さん» ありがとうございます！(´；ω；｀)ゆったり更新ですが、がんばります！ (2019年8月21日 1時) (レス) id: 13cdda6338 (このIDを非表示/違反報告)
ミナ(プロフ) - かぐやさん» そうですよね！アニメ2期も楽しみです(*^^*) (2019年8月21日 1時) (レス) id: 13cdda6338 (このIDを非表示/違反報告)
3626 5503 63 - 更新大変かもしれないけど 頑張って下さい！ (2019年8月13日 10時) (レス) id: 878066c85e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ミナ | 作成日時：2019年6月29日 0時
