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ここ数日の職場は平和だ。落ち着かないのは私の心。
職場の給湯室でお湯が沸くのを待ちながらぼんやり考える。
「好きだから一緒にいたい」
律子先輩に言われた言葉が何度も頭を過り、その度に浮かぶ2人の顔。
太輔先輩と裕太くん。
そういえば2、3日太輔先輩の姿を見かけていない。
新しいプロジェクトが忙しいのだろうか。
「A先輩、コーヒー運ぶの手伝いますよ。」
隣の席の里香ちゃんは1年下の後輩で気が利く、しっかり者。
「先輩、相談があるんですけど。」
そんな彼女から相談なんて初めてのことだった。
「どうしたの?」
「私、藤ヶ谷先輩に告白しようと思ってるんです。」
「え?」
彼女が入社当初から藤ヶ谷先輩に想いを寄せていたことは知っていた。
それでも、彼女の気持ちは自分と同じように憧れといった類のものだと心のどこかで思っていたのだ。
「本気なんです。藤ヶ谷先輩のこと。だからA先輩、協力してくれませんか?」
「協力って・・・」
「私知ってるんです。最近、A先輩が牧田先輩たちと飲みに行ってたの。今度、私も誘って貰いたいんです。」
「あれは私が誘ってるわけじゃ・・・」
「そこを上手くなんとかお願いします。」
里香ちゃんが手を合わせ、上目遣いで見つめてくる。
そのウルウル、キラキラした小動物のような瞳で見られるとノーとは言いづらい。
「わかった。今度、先輩たちに言ってみるね。」
「ありがとうございます!」
里香ちゃんは淹れたコーヒーを持って給湯室を出て行った。
里香ちゃんのお願いを断れなかった。
彼女が太輔先輩を想う気持ちは何度も聞いていたし、好きかどうかもわからない私の想いよりもずっと真剣だと思うから。
若干のモヤモヤを胸に感じながら、そう自分に言い聞かせた。
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作者名:Pyon-co | 作成日時:2014年12月8日 20時