あの時キミに・・・【2】 (ページ12)

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「いや、別にいいんだ。その、仲良さそうだったから付き合ってるのかなと思って。」

裕太くんがバツ悪そうに顔を逸らした。

「先輩たちとは昨日、初めて一緒に飲んだの。会社でもまともに話したことなくて。」

「そうなんだ。」

裕太君との会話が途切れ、沈黙の闇が辺りを包む。

どうしよう、何か話題・・・。

「あのさ、名前なんだけど・・・」

裕太君が言った。

「名前？」

「玉じゃなくて、下の名前で呼んでほしいんだ。」

「・・・あ、裕太くん？」

「うん。Aちゃんにはそう呼んでほしい。」

Aちゃん。

裕太くんが初めて私の名前を呼んだ。
ただ、名前を呼ばれただけなのに。
裕太くんが呼んでくれると、どうしてこんなに胸がザワザワするのだろう。

ブーッブーッ
コートのポケットで携帯が振動している。
携帯を取り出しディスプレイを確認する。

「あ、みっくんからメールだ。」

「ミツ先輩なんだって？」

「うん、無事に家着いたか？って。みっくん、親みたい。」

「心配なんだよ。それだけ大切に思われてるってことじゃないかな。」

「そうだね。じゃ、私すぐそこだからここで。今日はありがとう。」

自転車から鍋の道具を降ろした。

「Aちゃん、あの。」

「なに？」

「いや、またね。」

裕太くんはそう言うと自転車に乗って走り去って行った。

「またね」

ってことは、また会えるっていうことかな。

裕太くん、また会いたいな。