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試験の会場に入る直前、履歴書を取り出そうとバッグの中を探したが何故か見当たらない。
家を出るときも、試験前に寄ったカフェでも履歴書があることは確認していたのに。
人生の中で未だかつてない危機的状況だった私は試験会場入口でオロオロしていた。
試験の開始時刻が迫るなか、1人の若い男性が息を切らしながらこちらに走ってきた。
「これ、君のだろ?」
そう言って手渡されたものを見ると、それは間違いなく・・・
「私の履歴書!これ、どうして?」
「良かったぁ、間に合って。」
まるで自分のことのように安堵した表情を見せたその男性は
私の肩にポンと手を置いて、
「よし、頑張れよ!」
そう言った。戻って行く後姿に
「あの、ありがとうございました!」
と声をかけると
男性は片手を上げながらこちらを振り向き微笑んだ。
私は無事に試験を終え、1か月後に内定通知を受け取ることができた。
入社後、その男性が「藤ヶ谷太輔」先輩であったことがすぐにわかった。
そして簡単に近づけないくらい人気のある先輩であったことも。
あの時、藤ヶ谷先輩が履歴書を届けてくれなかったら今の私はない。
いつか話せる機会があったら、ちゃんとお礼を言おうと思っていた。
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作者名:Pyon-co | 作成日時:2014年12月8日 20時