あの時キミに・・・ (ページ6)

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隣の席の里香ちゃんがデスクに戻ってきた。

彼女は私の後輩。
愛想が良くて、素直で可愛らしい雰囲気。
入社当初から藤ヶ谷先輩のことを一途に想っている。

「藤ヶ谷先輩、どうしたんですか？」

「あぁ、ごめん。ちょっと椅子借りてた。ありがとね。」

椅子から立ち上がった藤ヶ谷先輩は私のほうに振り向く

「じゃぁ、またね。」

「あ、ありがとうございました！」

ふっと笑った先輩の顔が私に近づいて

「遅れんなよ。」

って耳元で言った。
胸の奥の方がキュンってして、一気に体温が上がる。

颯爽と去っていく藤ヶ谷先輩の後姿を遮るように里香ちゃんが視界に現れた。

「A先輩。藤ヶ谷先輩と何話してたんですか？」

「何って・・・あ、これ。
　係長に急に資料のまとめ頼まれちゃって藤ヶ谷先輩が手伝ってくれてただけだよ。」

「なんで藤ヶ谷先輩が？」

・・・なんでだろう？

里香ちゃんが心配そうに私の返事を待っている。

「たまたま通りかかったところに、私がうな垂れてたからじゃないかな？
藤ヶ谷先輩って困ってる人をほっとけないじゃない。」

「それで手伝ってもらったんですか？
　いいなぁ。
　藤ヶ谷先輩って本当に優しいですよね。
私も前に仕事で困ってた時、助けてもらって～」

里香ちゃんが藤ヶ谷先輩に助けてもらった話、
もう何度も聞かされてる。
里香ちゃん、藤ヶ谷先輩のこと好きで好きで仕方ないんだな。

藤ヶ谷先輩、誰にでも平等に優しいんだよね。
だからモテるんだろうな。