第20話 ページ22
Noside
｢いち兄、入るぞ｣
そう言って薬研は、片手で襖を開いた。
｢今日の夕餉は野菜炒めとほうれん草のおひたしと、なめこのお味噌汁。食べられそうか？｣
｢あぁ。ありがとう、薬研。…いつもすまない｣
｢いいさ、これくらい。重傷なんだから、大人しくしててくれ｣
そう言って、薬研は一期一振の傍におぼんを置いた。
ゆっくりと夕餉を食べ始めた一期一振を見ながら、薬研はそっと口を開いた。
｢…………なぁ、いち兄｣
｢どうした？｣
｢この本丸に………新しい審神者が来た｣
その言葉を聞いた瞬間、一期一振は持っていた箸を手から滑り落とした。
｢………審神者？｣
｢ここの本丸を担当する政府の職員が代わったらしくてな。
霊力の量が尋常じゃない。……それに、これまでと違って霊気が澄んでる。濁ってない｣
｢…………今も、いるのか？｣
そう言って刀に手をかけたのを、斬りには行くなよと窘めてから、薬研は返す。
｢いる。鯰尾と骨喰が、本丸に置いてもいいんじゃないかって｣
｢あの二振りが……？｣
｢あぁ。……多分あの審神者に、俺達は折れない｣
薬研の言葉に、一期一振は眉を寄せた。
｢そんなこと、｣
｢その審神者、超ビビりでさ｣
｢……は？｣
｢ここに来た時大広間の前でずっと泣いてて、最終的に自暴自棄になり始めて、三日月が呼ぶまで入ってこなかった｣
｢………審神者なのに？｣
｢審神者なのに。しかも大広間でその後ぶっ倒れた｣
｢…………｣
思わず一期一振は言葉を失った。
｢………本当に審神者なのか、迷子ではなく｣
｢本当に審神者らしい。こんのすけにも確認した｣
｢でも、審神者は……｣
一期一振は刀の柄をぎゅっと握りしめた。
｢いち兄の言いたいことは、ちゃんと分かってる。
あいつらも俺も、前の前の審神者………
｢じゃあ、なんで｣
｢このまま審神者の助けを借りずにいたら、折れる奴らがたくさんいる。
………いち兄も、このままじゃ折れる｣
｢それは………｣
｢安心してくれ、いち兄。
もし審神者が前の奴らと変わらない人間なら、俺が…斬るから。
もう前のようなことには、絶対しないから…………｣
そう言って、薬研は目を伏せた。
そんな弟を、一期一振は眺めることしか出来なかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 271人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雪 - とても良かったです( ´艸｀)続きが気になります(´ｰ｀) (2020年12月26日 21時) (
レス) id: ed2686deb5 (このIDを非表示/違反報告)
花梨(プロフ) - 雪乃さん» ありがとうございます！更新頑張りますね！ (2020年12月22日 21時) (レス) id: ca517f1ee4 (このIDを非表示/違反報告)
雪乃 - このお話めっちゃ好きです！続き楽しみにしてます！ (2020年12月22日 16時) (レス) id: 04eef4e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
花梨(プロフ) - イッヌの毛さん» ありがとうございます！伸びるように祈っててください！w (2020年11月20日 23時) (レス) id: ca517f1ee4 (このIDを非表示/違反報告)
イッヌの毛 - 面白い！絶対伸びる！ (2020年11月20日 20時) (レス) id: e2d97a71dd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：らび | 作者ホームページ：
作成日時：2020年10月18日 23時
