五日目 ページ40
Aが倒れて五日目
Em「…こんにちは、Aさん。体の方はどうですか？」
私は本を持ちながら、Aさんの横に腰掛ける。Aさんはすやすやと安らかな寝息を立てていた。
Em「今日はあなたに読んで貰いたい本を見つけまして、持ってきたんですよ。1話だけ、読んでみてもいいですか。」
返事が返ることはないので、私はゆっくり本を開いて読み始める。私には縁のない、とても美しい物語で、Aさんに似合うと思ったのだ。早くもその本の1話を読み終わると、私はまたAさんの顔を覗き込む。
Em「…いい物語だと思いませんか。言葉の並びがとても綺麗なのに、強い思いが感じられる。まるで貴方のようだ。早く、読んでもらいたいですね…」
そういうと私は前のめりになり、Aさんの唇にキスを落とした。酷く冷たい体温が、私を刺す。
Em「あぁ…ほんまに…おとぎ話の世界が心底羨ましいっ…！俺がこうやってキスをしてみても…貴方が起きるなんて…ありはしないっ…」
愛するもののキスで起きるだなんて、本当に、夢物語だ。現にこうやってAさんは眠り続ける。自分に奇跡を起こせたら…なんて、自分の力の無さが、憎かった。
………
俺が医務室に入れば、奥の方のカーテンが風ではためき、Aさんの顔をかする。寒いといけないと思って、空いていた窓を閉めた。
Shp「こんばんはAさん。今日は、月がとても綺麗ですよ。」
さっきまではためいていたカーテンを開けると、そこには爛々と輝く赤い月があった。今ではその美しい月も、自分にとってはくすんで見えた。
Shp「もう今夜で五日目…Aさん、まだ起きてくれないんですか…みんな、待ってるんですよ…」
いつも自分をいじってくる先輩も、自分がいつも煽り倒している相手のコネシマさんも、みんなみんな…沈んでいる。まるで泥が心にこびりついているようなのだ。自分も…同じだった。コネシマさんに苛立つ日も、大先生の茶番に付き合って疲れた日も、Aさんが居たからこそ癒されたというのに、本人は未だに起きてくれない。
Shp「もう、五日目ですよ…皆さんもあなたを心から待ち望んでいる。みんなあなたの声を聞きたい。笑顔を見たい。触れたい。ねぇ…お願い…はよ起きて…俺たちを安心させてや…」
自分とは思えないほど弱々しい声で、Aさんの手を握る。陶器のように白く、冷たかった。
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まつり(プロフ) - 完結おめでとうございます！！いや、もう、ほんとにノアさんの物語の完結させ方が大好きすぎます！やばい！好き！（語彙力）夢主ちゃんもドタイプですし、最高です！お疲れ様でした、ありがとうございました！ (2020年10月14日 20時) (
レス) id: 83f48e582b (このIDを非表示/違反報告)
漣@音ゲー民(プロフ) - 完結おめでとうございます！初期から楽しく見させていただき、日々更新を楽しみにしていた癒しの作品が完結となると…寂しくなりますね（笑）何はともあれ大好きなハピエンで嬉しいです。素敵な作品ありがとうございました！！！！ (2020年10月14日 16時) (レス) id: 2c758a340b (このIDを非表示/違反報告)
ふわ(プロフ) - 完結おめでとうございます！！連載当初から興味を持ちどんな展開になるのだろうと思いながら読まさせて頂きました！素敵な作品を書いてくださりありがとうございます！！ (2020年10月14日 1時) (レス) id: 811a4cfa4f (このIDを非表示/違反報告)
真由(プロフ) - 完結おめでとうございます！最初から最後までとても楽しく読まさせて頂きました！ハラハラする場面も多くドキドキしましたがハッピーエンドで終わって良かったです！長い間お疲れ様でした！ (2020年10月13日 23時) (レス) id: 045f50c8f8 (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - Ｒさん» ありがとうございます！寂しい…ですか？そう言っていただけるとは嬉しいです！ぜひぜひ何度も読み返しちゃってくださいね！ (2020年10月13日 21時) (レス) id: c0349a147b (このIDを非表示/違反報告)
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