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何かと便利な悪魔の力に感謝しながら
一気にAの注意が車に集中した隙に、
流れるように会計を済ませる。
車の持ち主が現れ、
不思議そうなジェスチャーをしながら
パニックモードを解除し外に平和が戻る。
「ダーリン、僕を誤解しているよ。
見返りなんてこれっぽっちも要らない」
どうぞ、とAの目の前に
いかにも高級な箱を差し出す。
案の定驚きで固まってしまったAを
スマートにエスコートし店の外へ連れ出す。
「受け取れません」
と言っても先程差し出された箱は
条件反射的に受けとってしまった。
「でももう君の手の中にあるじゃないか」
「こ、れは条件反射でさっき、あの、
受け取ってしまいましたが…
と!とにかく!お返しします」
「本当に要らない?
僕の目を見て。君の本当の望みは何?」
やられた。
まるで頭にモヤがかかったように
何も考えられなくなる。
本心を答えなければ。無意識にそう思った。
「折角買ってもらったので
このチョコレートを
ルシファーや署のみんなと
分け合って一緒に美味しく食べたいです」
「おや」
この言葉はルシファーにとって
意外そのものだった。
表面では散々要らないと言い張りながら
本心では独り占めしたくてたまらないと願うAの心の底の醜い部分を曝け出して
からかってやるつもりだったからだ。
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作者名:若松 | 作成日時:2021年9月28日 14時