4 ページ11
「僕はお前のこととなると
とても、とてもとても嫉妬深くなる。
もう十分わかっていると思っていたが、
どうやら教え足りなかったようだ。
Aはもっと賢い子だと思っていたのにな」
顎に置いていた手をするりと
髪の毛へ伸ばし少し指を滑らせたのち
喉元へと手を運ぶ。
決して締めはしない。
ただ置いてあるだけなのに
自分の命を握られている感覚になる。
心なしか酸素が薄い。
「この頭の中に人間が居座っていることが
酷く気に食わない…」
ルシファーは悩ましい顔を見せたあと、
何か名案を閃いたように
ぱっと顔を明るくさせた。
「ああ、そうだ！
あいつをここに連れてきて目の前で
腹を割き、生きたまま内臓でも腸でも
引きずりだして弱っていくのを
一緒に見届けよう、ワインでも飲みながら」
兄の提案の意味がわからない。
言葉は理解できるのに
意味が全く頭に入ってこない。
それに何故こうも
嬉々として喋っているのだろうか
「Aのせいで人間が
1人地獄にいこうが僕は一向に構わない。
寧ろあいつは既にお前の輝かしい道に
土足で入った罪がある。罰しないと。
そう思うだろう？」
無邪気に聞いてくる兄に
底なしの恐怖を感じる。
こうなると何を言っても無駄になり、
Aに出来る事は１つに限られている。
これ以上、事を酷くしないこと。
「ご、めんなさい。ごめんなさい、
ごめんなさい、兄上」
「何に対して？」
自然とぽろぽろと
とめどなく涙が溢れていく。
何度も小さく謝罪の言葉を繰り返す。
「結果的に兄上に秘密を作ってしまったこと」
「この全ての会話の中で悪いのは誰？」
「私です」
「正解。じゃあ僕がお前への罰として
計画を実行しても問題ないよね。過去の精算とでも考えよう」
「もう、彼には会いません、もう、勝手なこともしません。お願いだから、やめて」
ルシファーの胸元に両手を添えて、
胸板に体を預ける。
ルシファーは
ふっと小さく息をついた。
「…仕方ないな、愛しい妹の頼みだ」
表面上はいつもの優しい兄の笑顔を浮かべ
Aの頭を撫でる。
涙を拭いてやりながら、
でもね、と言葉を続けた。
「もしまた秘密の友達を作ろうとしたり
僕を裏切るようなことがあれば…」
一息置いて、悪戯っ子のように笑いながら
Aの耳元で囁いた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：若松 | 作成日時：2021年9月28日 14時
