これが恋だなんて信じないⅡ (ページ1)

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「本当に……ありがとうございます……なんか……自分から雨に濡れといて熱出すって本当に馬鹿だよね……ごめんなさい…」

「いや、しょうがないでしょ。むしろいつもなら傘持ってるところを俺が借りてたからこうなったわけやし……ごめん」

私の目の前に座って頬杖をついている彼は申し訳なさそうに眉を下げた。貸したのは私だから全然宏規くんのせいじゃない。むしろここまでしてくれてるのに。頭が上がらないではないか。

「宏規くんのせいじゃないの。天気予報見てなかった私が悪いんだし……にしても、なんかここまでしてもらって……本当にありがとう。すごい助かりました」

しかも生きてるうちに宏規くんのつくったお粥食べれると思ってなかったし、と笑いを含ませて言うと、いつでも作るよ、と優しく言われた。予想してなかっただけに本気ではないととわかっていても動きが一瞬止まる。

「……明日の公演きつそうだな…」

いや、しかし出るべきだ。私などいてもいなくてもほとんど変わらないけど、皆さんに迷惑をかけるし……それよりも、休むことで皆からの反応がどんなものになるのか分からないのが怖くて公演を休みたくない、っていうのが本音だが。

「明日起きて、辛くなかったら行けばいいんやない？だって、明日無理に出て千秋楽出れんかったらそれこそ嫌でしょ」

そう言い終えてから、宏規くんは私がお粥を食べ終わるのを見計らってか、薬らしき錠剤とコップに入った水を机に置いた。

「用意めっちゃいいじゃん………宏規くんって意外と面倒見とかいいんだね」

面倒見られてそうなのに。というセリフは心に閉まっておいた。

「運ぶのとかも重かったでしょ……背中折れなかった？」

「いやAちゃん1人くらいで腕折れんわ」

「うん、おんぶじゃないの？」

「いや、こう……お姫様抱っこ」

そう言いながら腕で動きをしてみせる宏規くん。思わず、意識なくてよかった……と手で顔を覆って呟いてしまった。ファンがいたら即死亡である。の前に、私が恥ずかしさで死んでいた。

「小さい頃にパパにされたぐらいしかお姫様抱っこなんぞの記憶ないわ……。あ、そうだ。今日のお礼はいつか……映画行く時にでも…」

「え、いや、全然いいよ？あ、ってかいつにする？」

「いつ空いてる？私は千秋楽以降は結構暇になる……かな」

まだ決めていない映画の予定。千秋楽が終わって私は少しの間暇になる。まあいわゆる無職だ。