これが恋だなんて信じないⅡ (ページ2)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:57,057 hit

3 ページ2

「俺はね、6日にファンミで10日にレミゼの新キャストお披露目会があるから……千秋楽の次の日かその次の日は？千秋楽の次の日だと疲れとるよね」

「いや、大丈夫だよ？千秋楽の次の日で。まあまず熱が収まらんとあれなんだけど……ってか結構早い日でびっくりした」

そう言いながら薬を飲んだ。一瞬で治ればいいのに。

「ん？まあそれ以外にも空いとるんやけどね。わりと10月は暇。でも……楽しみだから早く行きたいし」

「たの…しみ……」

宏規くんが誘ってくれたのだが、改めて楽しみと言われると照れる。少しだけ上がった心の温度を下げようと平常心を保とうとするも、1回上がると下がりにくいのが私の心の温度である。さっきのお姫様抱っこ事件でも様子を想像してしまい、少しだけ上がっていた。

「そ、そういうこと気軽に言っちゃダメだと思う……」

「えー？そんなこと言ったらAちゃんこそ気軽に俺の聞くことに答えたらダメじゃん」

「うっ……まあ、確かに…」

言い返せない。私の聞かれたことには答える性格はいつも私の味方をしない。

「でもまあ……嬉しいんやけどね」

「え？」

「なに聞いても、ちゃんと考えて答えてくれるところ。俺は言いたくなかったら多分誤魔化すな～。Aちゃんのそういうところ、俺は…好きだよ？」

好き

その言葉がなぜだかすごく耳に響いた。今日はなんて日なのか。拷問か。
かろうじて、ありがとうを途切れ途切れに言うと、恥ずかしさを紛らわせるために残っていた水を飲んだ。さっきよりも水が冷たく感じる。きっと顔が熱くなってしまったのだ。

いたたまれなくなった私は、冷えピタの替えとってくる、と言って勢いよく立って、椅子に座っている宏規くんの横を通り抜けようとした。

「うわっ」

案の定、勢いよく立ったおかげで頭がクラっとし、歩き出した途端に体勢が崩れた。地面とごっつんこする前に、咄嗟に伸びてきた腕が私を支えた。宏規くんのものだ。

私も咄嗟に宏規くんの腕を掴んでしまった。掴んでから気づいたが、細く見えるのに、実際はやっぱり男の人だと実感させるしっかりした腕だった。

「わっ、大丈夫？そんな動かん方がいいよ。俺冷えピタとってくるから、座っとき？」

「うん…ごめん……」

そう元気なく答え、私はまた椅子に座った。
少し変態くさいかもしれないが、服越しの宏規くんの腕の感触が手に残った。なぜだか今日は無性にドキドキして、落ち着かない。
熱のせいなら、いいのに