これが恋だなんて信じない

熱 ページ46

やってしまった。



さっきはズキズキするなーくらいだった頭痛が、中々に酷くなっている。やばい。身体の疲労も相まって、立っているのが心底キツい。あと、体も熱い気がする。店長も言ってた通り、熱かな。熱だったらそれこそ状況は危ない。明日も昼は公演だし、明後日は治っていなくても行かなければならない。なんといっても、初舞台の大千秋楽だ。一介のアンサンブルなどいなくてもお客さんには気付かれないのだろうが、そういう問題ではない。



店内にお客さんは少ないからその分、仕事量も少ない。それだけマシかもしれないが…今は暗めの店内を照らす小さな光でさえも頭に響く。



「みっきーちょっと来て〜」

「はー……い」



店長の声になんとか応え、レジを離れようと一歩を踏み出した途端、私は脚の力が入らずその場に崩れ落ちた。崩れる直前に、体を支えようとレジなどの載っている台に手をついたおかげで台の上のものを少し落としてしまった。硬い床の上に物の落ちる音がいつもより静かな店内に響く。



「Aちゃん……？」


「……っ」


「ちょっ、大丈夫?!」



帰り支度を済ませた格好の宏規くんといくみんを支配の端に捉えたときから、私の記憶は曖昧だ。

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