思わぬことは突然に1 ページ44
「お疲れさまでした〜!バイト行ってきます!」
「いってらっしゃーい。無理しんよーにねー」
玲夏さんの声を聞きながら楽屋の扉を閉めた。今日はマチネだけだから夕方からバイトが入っている。細々と続けているバイトも、ついに10月に入って半年ほどになった。ここまで続けていると辞める未来が見えない。私の初舞台も、あと2回で終わりだ。
「うわぁ…雨めっちゃ降ってる…」
天気予報を確認していなかった私は会場裏で途方に暮れた。
秋の夕方のうす暗い中、地面を容赦なく雨が叩きつけている。そういえば傘もまだ貸したままだし、まあでも忙しいんだからしょうがないよね。
前に宏規くんに会ったのは約10日前。綾瀬の家でふと思った、宏規くんが私のことをどう思ってくれているか、それを考えていると、派生して自分は宏規くんのことをどう思ってるのか、という問いにまで行ってしまって、軽く1、2時間は過ぎ去るようになった。しかし結局考えが飛び飛びになって答えは出ない。昔からの悪い癖だ。そして、考えてもしょうがないと思っていても、考え続けてしまうところも。
普通に10日も傘返してくれなかったらいつもは怒るんだけどなぁ。宏規くんは別にいいと思う。それは私が彼のことを人として好きだからか、それとも……
いや、考えるのはやめよう。
そう思って私は首を振ってから上着のフードを頭にかけて全速力で走り出した。
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見たか私の脚力!
50メートル走最高8.5秒(そんなに速くない)でそれなりにダンスでついた体力はこういう時にものを言う。
そこまで遠くない距離にあるうちのバイト先は走って10分もしないうちに着いた。
でも公演で疲れていたし、なにしろ雨が横殴りで強いので上着だけでなく普通に身体も濡れたし、冷えた。さすがに10月の夜の雨ともなると寒いことこの上ない。辛い。思わず肩で息をする。
「はぁ…はぁ……こん……ばんは……」
「うわお、みっきー大丈夫?!」
「いや……大丈夫、じゃない…ですよ……ってか、お客さんいませんねー……」
さすがの雨というか、閑古鳥が鳴く店内はせっかく雨の中を走ってきた私としては悲しいものがあった。いや、たくさんお客さんいたとしても扉を開けた音で振り向かれてそれはそれで注目を集めて嫌だが。
「そうなんだよねー。とりあえず、時間までは休んでなよー。ちゃんと拭きなよ?風邪ひくぞ?」
店長の言葉に返事をし、私は裏へと入っていった。
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ひよこまめ(プロフ) - 晴菜さん» ありがとうございます!長らく更新せずにすみませんでした……溜めていたのでバンバン更新(多分)します! (2019年10月25日 22時) (レス) id: dfe9b86821 (このIDを非表示/違反報告)
晴菜 - 続き楽しみにしています!無理せず頑張って下さい! (2019年10月21日 0時) (レス) id: 3c5af7941e (このIDを非表示/違反報告)
ひよこまめ(プロフ) - 木綿さん» コメントありがとうございます!最近暇なので……(本当は試験が迫っている)きまぐれ更新ですが、付き合っていただけてありがたいです (2019年10月13日 5時) (レス) id: dfe9b86821 (このIDを非表示/違反報告)
木綿 - たくさん更新嬉しいです!!続きドキドキです〜〜 (2019年10月13日 1時) (レス) id: a9775c7f67 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこまめ(プロフ) - ゆさん» コメントありがとうございます!最近更新が滞っているのでどんな文句が…とビクビクしてコメント見ました笑とても暖かいお言葉、ありがとうございます。 (2019年10月6日 0時) (レス) id: dfe9b86821 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひよこまめ x他1人 | 作成日時:2019年8月27日 4時