1.根暗少女。 ページ2
今日の私は多分、運が悪かったのだと思う。
おうし座はどこのテレビ局でも朝の運勢は最悪だったし、家に数学�気龍飢塀颪鮹屬�忘れてしまったし、現に今も、教室に忘れ物を取りにわざわざ学校まで戻っている最中だし。
｢あった｣
教室の机にご丁寧に置かれている財布。
これこそまさに、私の忘れ物。
でも嫌な予感がした。
私は財布をロッカーに入れていたはず。
こんな無防備に机に置いたりなんてしていない。
確認のため、財布の中身を確認してみる。
……やっぱり。
財布の中に入れておいた野口英世×2がまるまる無くなっている。
教室を出る前にぶつかりかけた、3人の男子と2人の女子を思い出す。彼女たちはなんと言っていたっけ？
『あ〜、今月まじ金欠なんですけど！今日カラオケ行きたいのに〜』
『あっはは、うちらの奢りでいーよー？』
『えー、それ悪いジャーン！金落ちてねーかなー……てか、降ってこないかなー』
『カナコー、何話してんだよ〜？』
『もー、ゆーとに関係ないしっ！』
あー、なるほど。
なんか、納得だ。
彼女たちは多分、私のロッカーを漁ったんだ。
それで運良く、いや私にとっては運悪くだけれども……財布を見つけた。
たかだか2000円でカラオケ代になるのか甚だ疑問ではあったが、今頃彼女たちは既にカラオケで、コイのウタでも歌っているのだろう。もうどうしようもない。
そもそも彼女たちに金を盗まれた証拠がない。財布を忘れた私が悪い。
諦めて教室を出る。
｢いやでも、盗むのは人として無いでしょ、流石に……｣
なんて独りごちても金は戻ってこない。
パタパタと廊下を走り下駄箱に向かう。
この校舎は複雑で、私たち1年生は第三校舎にある教室から渡り廊下を通って体育館のそばを通らなければならない。
体育館の入口近くの廊下まで来て、ふと気づく。
この体育館、声が聞こえる？
『〜〜〜！………〜！！』
｢えっ……んぜ、つ？｣
なんだか演説のような声が聞こえる。
マイクを使っているのか？
それとも、部活動？
｢ま、いっか……｣
何をして用が私には関係ないか、
と半ば諦めて私は体育館のそばを通り過ぎようとした。
その時。
突如、演説の声が、プツリと途切れてあることを述べた。
『逃げるのか？』
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作者名：いろはす | 作成日時：2018年4月28日 15時
