大切な人 ページ2
*
すっかりと日も落ち、月光盛んな夜が訪れた頃。
「あの…」
木の上で仰向けに月を眺めていると、下方から控えめな声音。
目をやれば、その明かりに照らされた女が怖ず怖ずとした相好で俺を呼んだ。
「夕餉の準備が終わりました」
「…なんでお前が」
「小太郎さんから、頼まれて」
ヅラの野郎、と変な気遣いに走った我が同志を脳内で祟ってやる。
酷く疲弊した女を連れて廃寺に戻ったとき、異性がやってきただのと変に浮き立つ野郎共に一喝してやったはいいが。
それからというもの、ニヤニヤとほくそ笑む仲間の顔が頗る腹立たしい。
ひっそりと心の内で仲間を罵りながらも、また女と一緒にでも戻れば茶々を入れられるに違いないと決めつけて、女に端的に返事を投げかける。
「すぐ行く。先に行ってろ」
「…高杉さん」
「なんだ」
「その…助けてくれてありがとうございました」
深々と頭を下げる女の姿に小さく息を吐く。
「…別に、礼を言われることでもねェ。当然のことをやったまでだ」
「それでも、高杉さんは私の命の恩人ですから」
先ほどよりも頼りのない女の声。
家族を失い、途方に暮れる女の様は、俺たちの想像を絶するほどの孤独と悲しみに打ちひしがれていることだろう。
俺は家族というものに思い入れは無いものの、松陽先生という最高の師匠と出会ってから、大切な人を失う怖さというものは、痛いほどわかる。
こんな末路になってたまるものかと。
無情にもそんなことを思った。
決意を新たに静かに拳を作ったとき、ひんやりとした夜風が俺達を襲う。
くしゅんと、一際小さなくしゃみの音。
すみませんと罰が悪そうに鼻をすする様を見て世話の焼ける女だと思うと同時に、嗚呼きっとまた冷やかされるだろうと勘繰りながら、地に降り立ってその小さな肩に自身の羽織をかけてやる。
「これ着てろ。それと晋助で良い」
「でも…」
「行くぞ、A」
「は、はい！」
「 大切な人 」
(初めて名を呼んだ秋夜のこと)
高杉の思春期到来。
原作の感じだと、余裕なんて無くて、女性の扱い方がわからないシャイボーイな青年期のイメージです。まあ黒い獣がうんたらかんたらで幕府とドンパチやってる今も思春期の延長みたいなもn(((
そんな彼のぎこちない関係性も描いていければなと思っています。
宇治
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宇治(プロフ) - ミウラさん» ミウラ様初めまして。コメ返が遅くなり申し訳ございません。大好きと言っていただけて光栄です♪今後ともよろしくお願いします。 (2023年1月15日 0時) (
レス) id: c046a70699 (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - この小説大好きです！更新楽しみに待ってます (2020年5月9日 20時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
宇治(プロフ) - ミナセナミさん» 初めまして、宇治です。ご愛読いただきありがとうございます。そういうお声をいただき、とても嬉しいです…！最高の褒め言葉をありがとうございます。完結まで時間はかかるかもしれませんが、頑張ります。待っていただき感謝です。今後ともよろしくお願いします。 (2019年8月19日 10時) (レス) id: c046a70699 (このIDを非表示/違反報告)
ミナセナミ(プロフ) - 前作からいっきに読ませてもらいました。一言で言うと最高似素敵な作品です！一話一話長すぎず短すぎず、夢主がみんなから愛されていて、幸せなほどよいキャラたちとの絡みで、今までで一番の二次創作です！リアルが落ち着きましたら書いてください！いつまでも待ちます (2019年8月18日 0時) (レス) id: 26b81df9b1 (このIDを非表示/違反報告)
宇治(プロフ) - (о´∀`о)さん» お世話になります、宇治です。とても嬉しいお言葉ありがとうございます。(о´∀`о)様のリクエスト、お応え出来ていないままですみません。落ち着いたら書かせていただきますので、よろしくお願いします。ありがとうございました！ (2019年4月8日 0時) (レス) id: c046a70699 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：宇治 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/uji/
作成日時：2019年4月6日 2時
