一生の不覚(1) ページ8
*
「AーーA!!」
いつもに増して大きなトシの声に手放していた意識がはっと我に返る。
神妙なトシの顔が目に入った。
「あ…な、なに?トシ」
「お前…何かあったのか?」
そう言って煙草に火を付けて、私の顔色を伺ってくる。
先程の総悟くんとのやり取りに極度の疲労と不安が私を襲い、つい考え込んでいたらしい。
トシは人の変化に鋭くて、微々たるものでもすぐに気付く。
ーー彼は心眼というものが使えるのかもしれない。
「ごめんなさい、少しぼーっとしてただけよ。別に何もないから」
「ーー本当か?」
「もう、疑ってるの?本当に何もな、」
問い詰められる焦りに足が縺れ、前のめりに傾けばそれを支える逞しい腕に抱かれる。
「おい、大丈夫か?」と声をかけられ、鼻をついたトシの煙草の匂いに頬に朱が差した。
先程の総悟くんの言葉に、改めて好きと言う意味を実感したようで。
覗き込むトシの顔を、面と向かって見ることが出来なかった。
「A、お前やっぱり様子がーー」
「土方さァん」
耳に入った飄々とした声。
条件反射のようにびくりと肩が揺れた。
そろりと振り向けば案の定、腕を組んで黒い笑みを浮かべた総悟くんの相好。
「勤務中に女とイチャついてて良いんですかィ?副長ともあろうお方が、良い御身分でさァ」
トシに向けられたはずの辛辣な言葉に反し、鋭い視線が私を捉える。
その冷徹な目に思わずトシの腕の裾をギュっと握り締めた。
「サディズム嗜好で女で遊び倒してるお前にだけは言われたかねぇよ」
「別に遊んでなんかいやせんよ。『調教』でさァ」
「一緒じゃねーか!」
ーーどうしよう。
彼の裏の顔を知ってしまった今、この状況はとてもマズイ。
冷や汗が頬を伝ったその時、総悟くんがわざとらしく私の変化を指摘する。
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ミウラ(プロフ) - 今までにない感じのお話で、話の進め方とかお話の書き方とかすごく好きです!これからもずっと応援してます (2021年2月1日 21時) (レス) id: d74a655a97 (このIDを非表示/違反報告)
宇治(プロフ) - あくび少女さん» 初めまして、宇治です。コメントありがとうございます。ドロっとしてますか?沖田の腹黒健在とのことで、原作の世界観を壊してませんでしょうか…!カッコいいとのお言葉いただけて嬉しいです。今後とも精進いたしますので、よろしくお願いします。 (2019年8月10日 1時) (レス) id: c046a70699 (このIDを非表示/違反報告)
あくび少女 - こういう少しドロッとしてる話、大好きです!しかも、沖田がゲスなのにかっこいい!更新頑張ってください (2019年8月9日 21時) (レス) id: 1b61770dea (このIDを非表示/違反報告)
宇治(プロフ) - 蝶遊さん» 初めまして、宇治と申します。お気遣いのお言葉、とても嬉しいです。ありがとうございます。総悟の言動を掴めていると思っても良いのでしょうか…!!この調子で執筆していければいいなと思っています。ありがとうございました! (2019年4月14日 16時) (レス) id: c046a70699 (このIDを非表示/違反報告)
蝶遊(プロフ) - コメント失礼します。沖田さんらしい言動や言葉遣いとても素敵です…!無理なさらなずに更新頑張ってください、応援してます! (2019年4月12日 19時) (レス) id: 845216b1cc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宇治 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/uji/
作成日時:2019年2月2日 22時