片恋慕(2) ページ11
*
「簡単な話よ。トシには慕っている女性がいるから言い出せないだけ。相手はーー亡くなられた総悟くんの姉のミツバさん。だよね?」
そう言って女は一人分程の距離を空け、俺の隣に腰掛ける。
ーーそこまで知っていたとは想定外だ。
「俺に近付いたのも当て付けのつもりですかィ?」
「それは違うわ。その事実を聞いたのは、あなたと初めて会った時だもの。勿論、トシから聞いたわけじゃない。あの人が色恋で口を割るような人じゃないってわかってるから」
どういう話の内容でそのような流れになったのかは定かではないが、あの時客人として迎え入れたのは近藤さんだ。
唯一俺たちの過去や今を知り、且つ仲裁的な立場と言えるのは、屯所内でも近藤さんしかいない。
「でもまさか総悟くんのお姉さんが、かつての想い人だったなんて思ってもみなかったな」
「…そこまでわかってて、なんで俺の交渉に乗ったんでィ」
「私の気持ちが伝わっちゃったら、トシも変に気を遣うでしょ?それにーーミツバさんには勝てないんだろうなって、トシを見て思ったの」
時が経てば、思い出というのは全てにおいて美化される。
ただでさえ記憶というのは人の心に美しく刻まれるというのに。
そう続けた女の顔は、とても切なげに微笑む。
「それでも…トシが好き。だから、例え彼の隣にいられなくても、トシを支えるって決めたの。それが私の生き甲斐だから」
一度捨てた命を愛する男の為に、か。
嗚呼。なんて滑稽な様だろう。
だが、それもまた面白い。
「A」
「え…」
「最初の命令だ。俺をーー落としてみなァ」
空いた隙間に詰め寄り、串に刺さった団子を間抜けな顔したAの口に入れ込む。
Aは目を見開き、俺の瞳を捉える。
ーーそうだ、その目。
アンタだけしか見えなくなるくらい
俺を溺愛させてみろ。
そうすれば、アンタに対する嫌がらせと言う名の命令も。
愛撫へと変わるだろう。
「 片恋慕 」
(俺の心を、支配出来るものなら)
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ミウラ(プロフ) - 今までにない感じのお話で、話の進め方とかお話の書き方とかすごく好きです!これからもずっと応援してます (2021年2月1日 21時) (レス) id: d74a655a97 (このIDを非表示/違反報告)
宇治(プロフ) - あくび少女さん» 初めまして、宇治です。コメントありがとうございます。ドロっとしてますか?沖田の腹黒健在とのことで、原作の世界観を壊してませんでしょうか…!カッコいいとのお言葉いただけて嬉しいです。今後とも精進いたしますので、よろしくお願いします。 (2019年8月10日 1時) (レス) id: c046a70699 (このIDを非表示/違反報告)
あくび少女 - こういう少しドロッとしてる話、大好きです!しかも、沖田がゲスなのにかっこいい!更新頑張ってください (2019年8月9日 21時) (レス) id: 1b61770dea (このIDを非表示/違反報告)
宇治(プロフ) - 蝶遊さん» 初めまして、宇治と申します。お気遣いのお言葉、とても嬉しいです。ありがとうございます。総悟の言動を掴めていると思っても良いのでしょうか…!!この調子で執筆していければいいなと思っています。ありがとうございました! (2019年4月14日 16時) (レス) id: c046a70699 (このIDを非表示/違反報告)
蝶遊(プロフ) - コメント失礼します。沖田さんらしい言動や言葉遣いとても素敵です…!無理なさらなずに更新頑張ってください、応援してます! (2019年4月12日 19時) (レス) id: 845216b1cc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宇治 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/uji/
作成日時:2019年2月2日 22時