一杯付き合え ページ20
*
「万斉」
かぶき町に赴いてとんぼ帰りをしてきた晋助。
そんな夕刻、突然と拙者は声をかけられる。
「一杯付き合え」
そう言い残して晋助は自室へと向かった。
その相好には、苛立ちを示しているように伺える。
ーー何かあったことは間違いないでござろう。
女か、はたまた戦友か。
余計な詮索を頭の中で繰り広げ、その後ろ姿を追った。
晋助に一言声をかけ、個室の襖を開く。
先日拙者が入手した女の写真。
目に入ったのは部屋の一廓でそれを眺める晋助の姿だった。
「世の中ってのは、上手くいかねェモンだな。ーー今も昔も」
そう言って、お猪口を手にして酒を嗜む。
その様子や言葉は愁いを帯びていた。
「過去に囚われるとは、らしくないでござるな」
「俺も人の子だ。情に絆されることもあるだろうさ」
先ほどの悩みのタネは前者にあたるものだったらしい。
鬼兵隊総督にあたる主君が、女を追う姿。
人の子だと豪語するのも大変納得がいくものだった。
晋助と向かい合って腰を下ろし、空になったお猪口に酒を並々に注いでやる。
「たまには酒に溺れるのも悪くないでござろう」
「ほう、てめぇの口から粋な言葉を聞けるとはなァ」
「歌に溺れたいのであれば、一手扱くのもまた乙でござる」
その言葉にハッと鼻で笑う主君に、自身の三味線の弦を軽く弾き、流れるようにそのまま演奏を奏でる。
しかし、晋助がこれほどまでに執着し骨抜きにされるAと言う女ーー。
写真越しでしか見たことはござらんが、一見普通の女と変わらないように思える。
一体どのような魅力を持つのだろうか。
(一度、会ってみたいものだ)
終わりを締めくくり、強く弦を弾いた。
晋助は横槍を入れる訳でもなく、また協奏するわけでもなく。
ただただ拙者の音を聞き、女の写真を見ながら酒を進めていた。
そんな男の姿に言葉をかけることなく、朝まで互いに呑み明かすのだった。
「 一杯付き合え 」
(さて…未来がどう動くか見ものでござる)
※お気に入り100名突破ありがとうございます。
今後とも精進していきますので、よろしくお願いいたします。
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宇治(プロフ) - 風寧さん» 風寧さん、こんにちは!宇治です。二度もコメントありがとうございます、嬉しいと言ってもらえてやる気滾ります。期待に応えられるよう頑張りますね!!これからもよろしくお願いします。 (2019年4月2日 18時) (レス) id: c046a70699 (このIDを非表示/違反報告)
宇治(プロフ) - アガシャさん» 初めまして、宇治です。コメントありがとうございます。話数もだいぶ迫ってきましたので、続編という形を取らせていただきました。頑張ります…!今後ともよろしくお願いします。 (2019年4月2日 17時) (レス) id: c046a70699 (このIDを非表示/違反報告)
風寧 - 以前コメントさせて頂いた者です。続編のお知らせ、本当に嬉しいです!楽しみに待ってます! (2019年4月2日 1時) (レス) id: 56908df3cc (このIDを非表示/違反報告)
アガシャ - 続編ですか!嬉しいです!頑張って下さい! (2019年4月1日 14時) (レス) id: a554153f5f (このIDを非表示/違反報告)
宇治(プロフ) - 蓬さん» 初めまして、宇治です。嬉しいお言葉ありがとうございます。そう言ってもらえると、すこぶる執筆意欲が湧きます…!!今後の展開にご期待いただければ幸いです。ありがとうございました。 (2019年3月16日 20時) (レス) id: c046a70699 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宇治 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/uji/
作成日時:2019年1月20日 14時