落涙 ページ14
*
最後に呟いたAの想い。
その言葉を胸に、眠りについたAのか細い身体を抱き上げる。
そんな時ふと、背後についた影。
はなから感じとっていたその気配に瞼を閉じて嗤笑した。
「ククク…久しく再会した男と女が情けを交わしてる最中に、空気の読めねェ奴だ。ーーなァ?ヅラ」
名前を呼び問いかけると、ヅラの声と共に首元に鋭利な刀が伸びる。
「生憎、おれには拐かしてるようにしか見えん」
「…どうやってここまで嗅ぎつけた?」
「彼女におまえの情報を与えて、つけさせてもらった。Aがそれを頼りに動くのは想定内だったからな」
「随分と俺の女を雑な扱いしてくれるじゃねェか」
普段しっかりしているようで、隙があるのは今も昔も変わらねェらしい。
その弱みに付け入る輩が身近にいるのは事実。
ーーまァ、昔からこいつに好意を持つのは一人しか心当たりはねェがな。
「ーー高杉、Aを離せ。でなければ即座におまえの首を刎ねる」
「てめェに“仲間”を斬ることができるのか?」
「そうやって見縊ってると己の身を滅ぼすぞ」
どうする?
疑問を投げかけ、ヅラは刀を更に寄せてくる。
どうやらその覚悟はホンモノらしい。
ーー銀時やヅラを出しにして、Aを攫う目論見だっだが…こいつの先見は俺よりも一枚上手だったらしい。
「ーーここでてめェと刀を交えたところで、Aの様体は変わらねェ。それに…今はてめェに構ってられるほど暇じゃないんでね」
吐き捨てた言葉とともに、目の前の空き家に足を踏み入れる。
自身の羽織で包んだAを床に横たえ、その顔を眺めた。
ーーA。
ちょっとの間だが、お別れだ。
「ヅラ。次邪魔したら…てめェでも容赦はしねェ」
こいつは俺のモンだ。
そう公言し、その場を後にする。
「ーー待て、高杉!そこまでAを想うなら…何故あの時彼女を置いて行った!!」
静かな怒りと叫びを背に一瞬だけ、足を止める。
浮かぶのは、“あの時”と称したAの涙。
ーーそう、当時の俺はお前を背負う覚悟もなく。
ここまでの長い時を経て、やっとーー
走馬灯のように浮かぶその惨めな過去に舌打ちをし、その場を後にしたのだった。
「 落涙 」
(俺には過去を悔やむ選択なんざねェ)
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宇治(プロフ) - 風寧さん» 風寧さん、こんにちは!宇治です。二度もコメントありがとうございます、嬉しいと言ってもらえてやる気滾ります。期待に応えられるよう頑張りますね!!これからもよろしくお願いします。 (2019年4月2日 18時) (レス) id: c046a70699 (このIDを非表示/違反報告)
宇治(プロフ) - アガシャさん» 初めまして、宇治です。コメントありがとうございます。話数もだいぶ迫ってきましたので、続編という形を取らせていただきました。頑張ります…!今後ともよろしくお願いします。 (2019年4月2日 17時) (レス) id: c046a70699 (このIDを非表示/違反報告)
風寧 - 以前コメントさせて頂いた者です。続編のお知らせ、本当に嬉しいです!楽しみに待ってます! (2019年4月2日 1時) (レス) id: 56908df3cc (このIDを非表示/違反報告)
アガシャ - 続編ですか!嬉しいです!頑張って下さい! (2019年4月1日 14時) (レス) id: a554153f5f (このIDを非表示/違反報告)
宇治(プロフ) - 蓬さん» 初めまして、宇治です。嬉しいお言葉ありがとうございます。そう言ってもらえると、すこぶる執筆意欲が湧きます…!!今後の展開にご期待いただければ幸いです。ありがとうございました。 (2019年3月16日 20時) (レス) id: c046a70699 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宇治 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/uji/
作成日時:2019年1月20日 14時