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振り向いてくれないAが早足に出ていったのを、見えていないのがわかってるのに手を振って見送って、部室のドアをそっと静かに閉める。

ちらっと目に入った、ぎこちない笑顔を浮かべながら頬を染めていたAの顔が頭の中でフラッシュバックする。

昔からそうだ。
隠しきれてないのに、隠せていると思っているようなところも可愛くて仕方がない。
そんな彼女の顔を見たいばかりに、こういうことをする自分にも嫌気が差す。


「はぁ〜」


さっきの彼女を思い浮かべて、逃げるように出ていったAと同じくらいに頬を赤く染めながら手で顔を覆う。
指先で触れる自分の頬は熱を持っていて熱い。



「本当にずるいやつ」



あんな顔されて気付かないほどオレも鈍くない。



「今日はちょっと攻めすぎたよなぁ……」


Aがいなくなったことを確認して、1人反省会。2人きりだったこともあり、がっつきすぎた自分に呆れてしまう。

Aの言う「好き」が異性へ向ける好意だということにも昔から気付いていた。けれど、この都合のいい関係を崩して、先に踏み込むのは勇気のいることだったから、ずっと誤魔化してきた。

誤魔化し合っている間は、一途なAがオレにだけあの熱っぽい甘い視線を向けてくれる。他の男じゃなくて、オレを見ててくれる。


「大人気ねぇな、ほんと」


自分だけを見てほしいから。
これがきっと独占欲というものなんだろうな、と思った。

ずっと自分だけを見ててくれる保証なんてどこにもない。
そんな自信だってない癖に。

あの甘い視線も、鈴を転がすような優しい笑い方も、昔より伸びた背丈も、全部Aがオレをおいて先に大人になってしまっているように感じてしまって、少し寂しく感じた。

可愛らしい女の子だったのに、いつの間にか綺麗な女の人になっていく彼女を人に盗られるのが嫌だなんて、わがままが過ぎる。


いつか伝えようの"いつか"を先延ばしにし続けて、だらだらとこの関係を続けてきた。
そのくせ誰かに盗られることを心配しながらも、まだ足踏み状態で前に進むことができない自分が1番ダメな奴だと思う。

Aからの「好きだな」にオレはちゃんと「オレも好きだ」と真面目に返せたことなんて1度もないことを思い出して、どうしようもなく虚しくなった。





部室の窓の外はもう夕日のオレンジ色から暗い夜の藍色に染まりかけ、時計の短針は6を指していた。

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Alice(プロフ) - きなこだいふくさん» 最後までお付き合いいただきありがとうございました…!そんな風に言っていただけて嬉しい限りです…!続編を作るかもしれないので、もし作った際はぜひよろしくお願い致します♡ (2022年4月2日 17時) (レス) id: fa28fe383f (このIDを非表示/違反報告)
きなこだいふく(プロフ) - 完結おめでとうございます。とても面白い話がたくさんあり、私自身とても楽しく読み進めることができました。こんな神作をありがとうございます!そして、更新お疲れ様でした! (2022年4月2日 11時) (レス) @page46 id: 90c5be706c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Alice | 作成日時:2021年9月19日 20時

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