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買われた 8 ページ11

『………んー、虫刺され、かな?』




 泉さんが出勤して間もない頃、私は泉さんの家の洗面台の鏡と睨めっこしていた。
私の仕事はパティシエ。常に安全安全、食の衛生を心掛けないといけないため、清潔なままで行く。

それで、髪を乾かそうとした矢先、首元に薄く散った見知らぬ赤い花弁に目が止まったのだ。




『……痒くないし、いいかな。私も出勤しなくちゃ』



 痛くもない、痒くもない。

特に異変がないため、無理やり思考を他に逸らして準備を進める。




……深く考えたら、ダメな気がする。









『おはようございます』





 出勤後、甘い香りが漂う調理場入口で大きな声で挨拶をして入る。気づいた人達がそれを返して、私はまず簡単な卵を割る作業に入った。



「Aちゃん浮かない顔してるわね」

『…鈴木さん。』



 途中、ベテランパティシエの鈴木さんが作業をしながら話し掛けてくれる。相変わらず器用な方だ。

お世話になってるので無視も出来ないが、この話題は少し嫌だった。




『…実は昨日、昔の先輩に会ったんです。』

「あら、それは良かったわね」




『それで、借金の事で困ってたら「買う」と言われてそのまま…』

「あらあらあら」



 鈴木さんは、職場で私の借金の話を知る数少ない人物だ。いつも私を心配し、自分の娘の様に扱ってくれるのだ。

鈴木さんは、少し乙女の標所になって口に手を当てた。




「青春ね…。」

『…私自身、正直あの先輩は嫌いなので少し気後れしますね…』

「でも先輩は好きなんでしょう?あなたのこと」



 段々と暗くなる声。

だけど、その傍から鈴木さんは確信した質問をする。まるで分かってるかのように。

なんで…。と、言わんばかりに見れ、鈴木さんは己の首元に手をちょこんっと当てて微笑ましい笑みを浮かべた。








「だって首元に”キスマーク”、付いてるわよ。独占欲が強いのかしら」









 途端、私は卵を1つ床に落とし、真っ赤な顔のまま停止した。

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紅茶 - めっちゃ良いです!こんな小説まってましたっ!是非続きが読みたいです、これからも頑張ってくださいヾ(*・ω・*)ノ (2019年10月13日 20時) (レス) id: dc12212b23 (このIDを非表示/違反報告)
チョコ - こんな神作品初めて見ました!!ヤバイくらいに面白いので、これからも更新頑張ってください!!!!! (2019年9月27日 11時) (レス) id: aed030ecf9 (このIDを非表示/違反報告)
黒。 - ななさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけてとても嬉しい限りです!ご期待に添えられるように頑張ります! (2019年9月13日 20時) (レス) id: d8cf0890ba (このIDを非表示/違反報告)
黒。 - お菓子なこいしさん» ありがとうございます!更新頑張りますね! (2019年9月13日 20時) (レス) id: d8cf0890ba (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 神っすね!ヤバイですよこの作品!更新楽しみにしています! (2019年9月10日 0時) (レス) id: cda48c16bf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒。 | 作成日時:2019年8月24日 18時

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