夢を忘れた少女 (ページ6)

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「胡蝶さん、なりたい職業とかないのかな？」

「特に無い。就職ならもうしてる。………形的にだけど。」

「后月家が名高い名門というのは庶民の先生でも知ってるけど………胡蝶さん
　人生はたった一度きりなのよ？」

何を言い出すのだろう。この先生は。

叔母さんは隣で私と先生の会話を聞いている。

「………知ってる。けど私は后月家の当主でいる。」

キッパリ私が放った言葉に先生はおしだまる。

理由がある。后月家の当主でいなくてはならない理由が。

「約束なんだ………あの子たちとの約束」

ポソリと呟いた私の言葉は誰にも届かずどこかに消えて無くなった。

「それじゃあ胡蝶さん。進路相談表に行きたい大学を書いてくれる？一週間以内に出して。」

優しい声で先生が言う。

けれど私は知ってる。

先生の言葉に感情などこもっていないという事を。

私は進路相談表を受け取り教室を後にする。

「胡蝶ちゃん。后月家の事なんて叔母さんに任せてくれればいいわ。好きな職業に就きなさい。」

叔母さんはそういって笑った。

先生とは大違いだ。

「やばっ。ごめんね胡蝶ちゃん。戻らなきゃ。」

「いいよ。気にしないで。来てくれてありがと。」

私は駆け足で去っていく叔母さんに手を振る。

空にかかった虹は今だ消えていない。

くっきりと残っている。

この日

私は一筋の希望を見つけるのだが………

それはまだ誰も知らない物語。