夢を忘れた少女 (ページ5)

今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:13,401 hit

5 ページ5

胡蝶飛夕(ひゆう)学院

今日は憂鬱な進路相談の日。

憂鬱な事が多いのは私の特徴。性格といってもいいかもしれない。

親来ないのに何を相談するのよ。

それに私の未来はとうの昔‥‥生まれた時から決まっている。

后月家の当主になるのだと。

けれど私は后月家が一体何をしている家系なのか全く知らない。

お母様もお父様も教えてくれはしなかった。

IT企業か何かだと思うけど‥‥‥

教室の前で自分の順番がくるのを待つ。

暇だ。本でも持ってくれば良かっただろうか。そう胡蝶が考えていた時に胡蝶の叔母が来た。

「胡蝶ちゃーん！ごめんねー。会議なかなか終わらなくて。」

叔母は疲れきっている。余程急いで来たのだろう。

「叔母さん‥‥‥本当に平気だったの？この時期すごく忙しいんでしょ？」

何の仕事をしているのか知らないが叔母はいつも忙しそうにしている。

会議の量がはねあがるのだとか何とか。

「全然大丈夫よ！叔母さん胡蝶ちゃんの事大切だから、何があっても来るよ！」

叔母さんは握りこぶしでガッツポーズを作って見せる。

名目上は私が当主の后月家だが実際の仕事は全て叔母が肩代わりしている。

まだ成人もしていない胡蝶ちゃんに仕事を任せるのはどうかと思う。

そうやって家の者たちに断言し当主の仕事は全て叔母がこなすようになった。

おかげで私の所に仕事は少しも来ない。

叔母さんが言うには「たった一度きりの青春。失いたくないでしょ？」らしい。

私は友達もましてや彼氏などいないので別に構わないのだが。

ふと外が気になり窓を見る。

空には虹がかかっていた。今日雨は降らなかったのに。

そして、叔母さんは空にかかった虹を見て、こう言った。

「あの日もこんな感じだったなあ」と。

叔母さんの思い出話が始まると止まらないのであえてその事について何も聞かなかった。

特に何も思わなかったから＿＿＿………