夢を忘れた少女 (ページ15)

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十二天将貴人こと、鵜宮天馬は一人苛立っていた。

今にも燃えてしまいそうな勢いで。

「・・・あいつっ。まさか来ない気か？！」

不服不満。

あいつ・・・胡蝶を鍛えるためにわざわざ后月家の道場に来たというのに(来たと言っても約束より十分遅い)肝心の胡蝶が姿を現さない。

そもそも家にいるのかさえ怪しい。

同じ家でにいるはずなのにご飯の時以外に胡蝶と会わないのだ。

「鵜宮様、もしかして胡蝶様をお待ちしておられるのですか？」

突然后月家の使用人の一人に話しかけられた。

気配なく現れた事に少し驚きながらも答える。

「あ、ああ。アイツ、どこにいるか分かるか？」

使用人はやっぱり、という顔をして丁寧に答えてくれた。

「胡蝶様は学校がお休みの場合のみ、お姿を見せないのです。さすがに食事の時は部屋から引っ張りだしますがね。」

笑いながら使用人は言う。

普通ならため息を漏らしながら言うだろうにコイツはそうじゃ無かった。

もうなれたろ言わんばかりに声色は明るい。

「で？アイツは今部屋にいるのか？んん？」

少しばかり怒りが混じった声だったが使用人は臆さない。

決して笑みを崩そうとしなかった。

「はい。今も部屋にいると思いますよ。あ、胡蝶様のお部屋はですね＿＿＿……」

何日かここにいて分かった事だが胡蝶は余ほど信頼されているらしい。

家の事など考えていないように見えて誰よりも家の行く末を案じてる。

それが分かっているから今もここにいるのだ、と使用人たちは口を揃えて言った。

天馬にはどうしてもそうは見えなかったのは誰も知らない。