夢を忘れた少女 (ページ11)

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「おお！これ旨いっ」

「気に入ってもらえて何より」

彼の前には蕎麦とみたらし団子が並んでいる。

私の前にはシチューとパン。

久しぶりに誰かと食べるご飯は美味しい。

「ふー。ごっそうさん」

大量にあったはずの蕎麦とみたらし団子は完食されていた。

「・・・一気食いしたらお腹壊すよ」

あれだけあったご飯を完食出来るなんて男の子って凄い、と思った。

ちなみに私はまだせいぜいパンの半分を消化した程度。

「おかわりありますよ。」

ニコニコして使用人は彼に話しかける。

私が人を家に連れてきた事に驚いているのか。

「お、いいのか？じゃあもらうぜ」

彼は随分と楽しんでいる。

すると廊下から話声が聞こえてきた。

「胡蝶樣が家にお友だちを連れてくるなんて・・・」

「感動っ。胡蝶樣・・・(涙)」

などなど廊下にいる(本人たちは隠れてるつもり)使用人たちの話が丸々聞こえてきた。

友達じゃ無いし。

「そうだ、お前名前なんて言うんだ？」

いきなり。唐突すぎる。

「私・・・？何で？」

「んん～？逆に何で聞かねえわけ？」

確かに。

私も何度か自分の名前を言おうと思ったが何か大切な物が無くなりそうで言えなかった。

その大切な物が一体なんなのかは知らないが。

「私の名前は胡蝶よ。后月胡蝶。」

自分から名を名乗ったのはいつぶりだろうか。

彼は目を丸くした気がした。