You and me...

もうすぐ春 ページ9

今日アキがやって来たのには特に理由がない。
お互いの休みが合えば、こうやって女子トークで盛り上がるのがちょっとした楽しみ。


ｱｷ「そうだA。アンタ今すっぴんだよね？
メイクさせてよ＾＾この前、春のメイク講座出てきたところなんだ」

「わーやってやって♪」


アキは化粧品の美容部員をしている。
今日みたいな休みの日は彼女も薄化粧だけど、もともと派手な美人顔のアキには似合う職業だ。


アキが取り出したのは、薄桃色とブラウンのアイシャドウパレット。
彼女の化粧ポーチには新作のコスメや、プロが使う道具が入っていつもぎっちりだ。


ｱｷ「きれいな色でしょ＾＾肌なじみ良いピンクだから、血色も良く見えるはず」

「まだ2月だってのに。もう洋服とか化粧品の季節は春なんだね〜」

ｱｷ「春なんてあっという間だよ＾＾」


春なんてあっという間、か。
アキに顔を預けながら、さっきの母の電話を思い出した。


「アキ・・・私さ。春には韓国帰るかもしれない」

ｱｷ「はっ？！帰るって〜一時帰省とかじゃなくて？」

「ん・・・。ほら、私のお父さん去年亡くなったじゃない？
お母さんがね、そろそろ戻ってきて欲しいみたいなんだ」

ｱｷ「そっか・・・。えーーでもやだぁ〜！寂しいじゃん、A！」

「私だって寂しいよ〜〜＞＜」


ｼﾞｮﾝｳﾝから逃げるように、韓国から日本の大学に留学してきて。
そのままこっちの大学を卒業して。
こっちで仕事も見つけて。
日本での生活も随分長いものになっていた。


アキは化粧道具を置いて、私に抱きついた。
彼女の長い髪からふわんといい匂いがする。
ハグを解くと、寂しそうな目をしながら私のまつげに触れた。


ｱｷ「マスカラ・・・つけすぎちゃった。驚いちゃったから」

「アキ・・・」

ｱｷ「それでA、仕事は？あっちでもヨガやるの？」

「ん、そうなると思う。てかそれしかないしね」


私は、今こっちでヨガのインストラクターをしている。


在学中ににヨガに出会って。
その奥深さと神秘性に引き込まれて―すっかりヨガの世界に夢中になってしまった。
それからはヨガのスクールできちんと単位を取ったので、
一応ヨガのアライアンスは取得している。


ｱｷ「そっか。あっちに家族がいるんだもんね。
それに・・・アンタの好きな人も」


アキはまた壁のｲｪｿﾝに向き直った。

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