You and me...

再会 ページ16

「あ〜いい匂い・・・」


小さな食堂のようだけど、美味しそうな匂いがしていて。
空腹に耐えかねた私はこの店で遅い夕飯をとることにした。


引き戸をガラガラと開けて、店の様子を見てみた。
飲んでいる男の人たちが何組かと。
あとは一人で食べている男の人がほんの2人ほどだ。


こんな時間に女の子がひとりご飯。
なんかぞっとしないけど・・・まぁでもさすがに家出にはみられないでしょ。
それにそんなことにかまってる場合じゃない。
店に入ると食欲を刺激する匂いが強く立ち込めていて、私はすぐに何品か注文した。


料理が来るのを待っている間、私は今晩のことを考えた。
もう11時近かったし、やっぱり今からﾁｮﾝｱﾝに帰るのは気が引ける。


だからといって、たかだか夜を越すためにホテルを取るのもなぁ・・・
ｿｳﾙのホテル代なんて高いし、これからこっちで暮らすためにお金は少しでも節約しておきたい。


こっちで暮らしている同級生とかもきっと何人かはいるはずなんだけど。
日本で暮らしている間にすっかり疎遠になってしまって、誰も思い浮かばなかった。


「困ったな・・・」


そうつぶやいた頃に、注文したスンドゥブが運ばれてきた。
湯気とスパイシーな匂いに食欲が増進して、私は考えるのをやめた。


「まぁなんとかなるよね」


最悪ネットカフェで夜を越す。
別に次の日仕事があるわけでもないんだから。


私は料理をぱくつき始めた。


＊


やがてトッポッキも出てきて私はそれも夢中になって食べていた。


「あ〜やっぱ韓国料理美味しい・・・」


日本食も大好きだったけど―
やはり小さいときから親しんできたのはこういう韓国の家庭料理だ。


懐かしくて、じっくり味を噛み締めていたとき―


「Aﾇﾅ！」


懐かしい呼ばれ方をした。
声がした店の入り口の方を見ると。


「Aﾇﾅでしょ＾＾」

「うそ・・・ｼﾞｮﾝｼﾞﾝじゃん！」


私のことをﾇﾅと呼ぶのはこの子だけ。
もう一人の幼馴染みのｼﾞｮﾝｼﾞﾝ。


「ほらやっぱり。兄さん、Aﾇﾅだよ＾＾」


えっ・・・。
ごくっと私は息を呑んだ。


ｼﾞｮﾝｼﾞﾝの隣にいた長身の男の人。
マスクと帽子で顔が見えないけど・・・その彼がマスクを顎まで引き下げると―


YS「A。久しぶり＾＾」


懐かしい笑顔。


でもあまりにも色気のない再会だった。

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